1.1
とても懐かしい夢を見た。
私こと間宮スイは、神様との言い合いの末意識を飛ばし、目を覚ましたらベッドの上にいた。
それももう思い出さないようにと記憶の奥底にしまっていた淡い初恋の思い出をバッチリ思い出した状態で。
「かーっ恥ずい! 恥ずすぎる!」
私はあの頃何をとち狂ったか、初恋の彼と両思いだと確信して女王様のような振る舞いをしていたのだ。本当は彼と一緒にいられるだけで嬉しくて、毎日教室の近くの踊り場で彼がくるのを健気に待っていたというのに。
精神年齢32歳の私には、甘酸っぱすぎる。撃沈。
セルフダメージを受けつつ、私は居た堪れなさを振り払うように頭を振りまくった。
……ん?
ふと違和感を覚えて、頭に添えた手を眼前に持ってくる。
「なにこれちっちゃ!!」
驚くべきことに、私の手はふっくらとした子どものもののになっていた。いや、手どころか、私の頭の上から足の先まですべて子ども仕様になっていたのだった。
そういえば、このベッドもなにやら身に覚えがある、と気づいた私は近くにあった全身鏡へと近づいた。背中を焼くような予感に体が震えていく。
───これは昔の私だ。
「すーちゃーん。早く起きて!」
固まる私の耳に聞き馴染みのある声が飛び込んできた。これは察するに私のお母さんだろう。しかし、私の震えは収まることを知らない。それなのに脳は勝手に答え合わせをしようと、目だけを動かして証拠を集めていく。目の前にある全身の映る鏡は、似たようなものを持っていた友達のシオリちゃんが羨ましくてねだって買ってもらったもの。ベッドだって高校生になって背が伸びて使えなくなるまで愛用してたものだし、部屋には小学生のときにハマっていた少女漫画が置いてあった。宿題で出たであろう漢字ドリルも転がっている。
動けない。
もしかして、まさか神様が、でもできるの? いやまずお母さんに返事を、と思考がまとまらない。
鏡の前でうずくまって頭を抱える。返事が返ってこない私を心配したのだろうか、階段をトントンと上がってくる音が響く。
扉が開く。
反射的に少しだけそちらを向いて、少し記憶にあるお母さんより若いその姿を視界に入れた瞬間、緊張の糸が解けるように私は倒れてしまった。