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「それにしても、なんで懐中時計が狙われたの?私には普通の懐中時計にしか見えなかったけど」

「普通の懐中時計ですよ」



 麻袋とマントに包まれ私に担がれながらフレイは言った。



「あれは、普通の懐中時計です。ローゼおじ……天使の死神が担当と長生きが出来ると噂になった事があったんです」



 その噂はタネを明かせば簡単なものだった。1人は父の実家の遺産をもらうために死んでは困ると息子がついた嘘。もう1人は愛している妻を死んだと思いたくない夫の嘘。

 しかし、その嘘で普通の『死神』は『天使の死神』と名を変えた。長生きできるのはどうしてだと考えた結果。誰にも見せないあの懐中時計が怪しいと誰かが言い出した。それはフレイが彫った文字のを誰にも見られないようにするためだったというのに……。



「でも、王様がそんなことする様には見えなかったけど……。」



 懐中時計のことは聞いていたが……。今、自分の子供が生まれるという時に、こんな騒動を起こすだろうか……。



「この事件は近衛隊長単独で動いているようです。自分が手に入れて王様に献上し褒美をもらうために。ここまで王騒動になるとは思っていなかったと思いますが。結果、懐中時計が手に入ればどうにかなるとでも思っていたのでしょう」

「勝手な話……」



 そんな話を聞いている間に門はすぐ目の前に迫っていた。しかし、さっきまで空いていた門は閂が降りており固く閉ざされている。

 門の前にはさっき外で見た光景と変わらない光景があった。行商人は列をなし怒号が飛び交う。諦めたものは他の行商人と商品の取引などもしているようだ。

 


 門の関所に目をやると見慣れた顔があった。ミルフィーナが兵士と話をしている。無事だったようだ。何かを訴えているようだが、ここから聞き取る事はできない…

 無事なのは確認できたとして、どうやってここを抜け出すか………私は行商人の中で一番話が分かりそうで、人当たりが良さそうな男に近づく。



「これは、どんな状況なのでしょう?」

「なんだい。ねぇちゃん知らないのかい?なんでも王様が出入りを禁止して通れないんだよ。その上、空いていた門も1人通しちゃった門だから、もう通れないようにと閉めちまった」



 あー、その1人って私のことかー。自分の首を絞めるとはこの事か。

 どうしたものか。これではあの新人兵士がどうにか鍵を開けて、ガイルがすぐにでも駆けつけてくるかもしれない。



「おじさん。これ果物?」

「だな。毛皮みたいに日持ちするもんじゃないから早く街に売りに行きたいんだが……」



 荷馬車の後ろには大量の果物が乗せられている。この量が捌けなかったら大損だろう。周りを見ると、他にも生物を扱っている行商人が多く見られた。



「おじさん。私にいい考えがあるんだけど乗らない?」



***



「嬢ちゃん本気かい?」

「うん!!」

「しかし……あの扉は……」

「そこは絶対どうにかする。あと、もう一つお願いがあるの」



 その行商人はカイルといい、この街の商業ギルドの中でも古参のようで、話をするにはうってつけの人物だった。

 カイルは隣の男に話をしに行き、その男はまた他の行商人に話をしに行った。私はその間にフレイをカイルの荷馬車に乗せてもらう。

 ものの数分で大体の行商人に話が回ったようでカイルが帰ってきた。



「他のやつにも話はしてきたが……本当に大丈夫かい?」

「任せて。もしダメだったら、私が勝手にしたことにすればいいから」



 そう言うと門に向かって歩き出す。緊張でひや汗が流れる。幸いにも門にはさっきいた兵士はいない。奥でミルフィーナと話に夢中になっているようだ。

 横目でミルフィーナがこちらに気づいた。ミルフィーナは不穏そうな顔をし兵士の気を惹きつけてくれている。やるなら今しかない──。

 


 行商人が門番の兵士を引きつけてもらっている間に門の前まで行き、で50キロはキロはあろうかと言う閂を外す。

 兵士が気づいて近づいてきたが、もう後戻りは出来ない。片方の扉でも80キロ近くはあるであろう門を開けなければならない。早く、早く開けなければ……。1センチ2センチと扉は少しづつ動くがこれでは間に合わない。

 


 そう思った時、行商人であろうか。体の大きい男2人が近づいてくる。よく見たら昨日大会で決勝をしていた2人だ。2人が扉に手をかけるとあっという間に扉が開いた。

 扉の前にいた行商人は手筈通り、顔が分からないよう外套や布で身を隠し一気に門を通り抜ける。兵士も轢かれるかもと近づいて来れない。



「ミルフィーナ!!」



 兵士の隣で立ち尽くしていたミルフィーナを呼び手を伸ばす。ミルフィーナも荷馬車の間から手を伸ばした。なんとか腕を絡ませ引き寄せると、ミルフィーナを担ぎ、馬を止めたあの丘へと向かう。

 丘まではだいぶある。息も切れてきた時、カイルが荷馬車のスピードを落とし近づいてきた。



「早くのれ!!」



 私はミルフィーナを抱えたまま荷馬車に飛び乗った。



「フレイは?!」



 ミルフィーナが聞いてきたので、端の方で寝かせていたフレイに目をやると、「良かった」と安堵した。



「それにしても、嬢ちゃんすげーな。最初、案を出された時はどうなるかと思ったが、本当にやってのけちまいやがった」

「おじさんも、ありがとうございます。私のお願いまで聞いてくれて」

「なに、この男をあそこの丘まで運べばいいんだろ。お安いご用さ」

「あの、門を一緒に開けてくれた男の人たちは大丈夫でしょうか……」

「ああ、あの2人は毎年大会に出るためにこの街に来た流れものだ。逆に力自慢ができて喜んでるんじゃないか」

「それならよかった」



 丘に着くと降ろしてもらい、お礼を言うと別の街へ荷馬車を走らせて行った。

 「さてと」とミルフィーナが呟く。


「2人は馬に乗って逃げて」

「え?ミルフィーナがフレイと……」

「私は捕まったってなにもしてないもの。あなた達は打走者!!早く逃げて」



 私はうなづき馬にまたがる、フレイは馬に捕まる元気もなさそうなので、馬に体を預けるように乗ってもらう。



「気をつけて」

「ミルフィーナも……ありがとう」



 そう言うと馬を走らせる。自分でも信じられない速さで草原を駆け抜けた。

 後ろを振り向くと、夕日が沈みかけ暗い中、松明を持った追っ手が門を抜けている。逃げる方向を間違った。街に戻るのは危険だ。ララベルや街の人たちを巻き込んでしまう。

 森に入ると、前にフレイに連れて行ってもらった洞窟への道に差し掛かる。ここしか無いと私はあの洞窟へ向かった。

消えたデータはおかしいな。ここまで書き上げた時点で2万文字あったはずなのに、

何を書いてないのだろう……。

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