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助けに

 城に続く階段の前につくと、いつもは2人くらいしかいない兵士が今日は数人で城を警備している。

 前に来た時のように自然に入ろうとするが「止まれ!!」と兵士に怒鳴られた。やはり止められてしまった。



「王妃様の逆子の件でお伝えしたいことがあります」

「今日は忙しい。また後日にしてくれ」

「大事な話なのです!!」



 数人の兵士がコソコソと話をしている。1人の兵士が城の中へ入っていく。ここは待つしかないか……。

 数分後、城から出てきたのは、あの態度のでかい近衛体調だった。



「王妃様は不在である帰れ!!」

「あの、お腹で何処に行くっていうの?!王妃様に会わせてください!!」



 このままでは埒があかない。無理やり入ってやろうと思った時、城から王妃が顔を出した。



「カンナさんが来ていると侍女が言っていたのだけど」

「王妃様、なぜこのようなところへ?!部屋へお戻りください」



 偶然城門の近くを通りかかった侍女が王妃に伝えてくれたらしい。王妃は私を見つけると手を振ってくれた。



「カンナさんを私の部屋に通して」

「申し訳ございません。今日は王様の命令で誰も通すなと言われております」

「私の言うことでも聞けないと?」

「申し訳ありません」



 王妃と近衛隊長が話している間にも、フレイがどんな目に遭っているかもわからない。気がはやり一歩一歩階段を登る。兵士が目の前に立ちはだかる。

 私は兵士の間を縫うように走り抜け、1人の兵士の剣を鞘から抜き取る。昨日見たあのスリの手口だ。本当にできるとは思わなかったが……。階段を上り切ると王妃の後ろに回り込み、すかさず首元に剣を突きつけた。兵士が一斉に私に注目する。



「?!カンナさん?!」

「王妃様申し訳ありません。──フレイがここにいるでしょ。案内して!!」

「フレイさんが?ガイル本当なの?」

「……はい、間違いありません」




 王妃は何も知らないようだ。ガイルはは仕方なくと言った感じで数人の兵を連れ城の奥に入っていく。私も混乱している王妃に剣を突きつけたままついて行く。前を歩くガイルは一瞬の隙も見せない。少しでも気を抜けば、すぐさま剣を抜き切りかかってくるだろう。

 長い通路がどんどんと狭くなり、奥には地下に降りる階段があった。階段を降りながら王妃が話しかけてきた。



「フレイさんを助けに1人でここへ?」

「……はい」

「こんな危険を冒してまで……。よほど大事な人なのね」

「はい。大切な人です」

「そう」



 階段を降り切ると冷たい鉄格子の中で、両手に手枷をはめられ視座をついて項垂れているフレイの姿があった。



「フレイ?!」

「カンナさん?!なんでここに!!」



 私の呼びかけにピクリと体を反応させ、ゆっくりと頭を上げた。ところどころ殴られたような怪我があるが、喋れる元気はあるようだ。



 「扉を開けて」と伝えると近衛隊長は腰につけていた鍵を取ると鉄格子の扉を開けた。私はガイルを含む兵士全員を牢の中に入るよう言い、私も王妃と一緒に中に入る。



「僕に構わずここから出ていってください。──僕はもう……」



 そう言って自分の足を見た。フレイのアキレス腱が切られており足首が凹み、ふくらはぎが不自然に盛り上がっている。これでは立ち上がることもできないだろう。



「誰がこんな酷いことを──」



 ガイルを見るとニヤニヤと気持ち悪い顔を浮かべている。──こいつか!!



「手錠を外して」

「手錠を外してこの男とどうやって逃げる?こいつはもう歩けない。王妃様を脅しながらこいつを抱き抱えて逃げるか?」



 そう、どうすればいい。少しでも王妃から離れればガイルはすかさず剣を抜き飛びかかってくるだろう。



「黙りなさい!!」



 王妃凄むと、ガイルはさすがに怯む。



「手錠を外して牢の鍵もこちらに投げなさい。そしたら、あなた達は奥の壁に手をつきなさい」

「王妃様なにを?!」

「早くなさい!!」



 ガイルはフレイの手錠を外すと牢の鍵を私の足元に投げ、他の兵と一緒に後ろ向きになり壁に手をついた。手錠を外されたフレイは立ちあがろうとするがやはり足に力が入らないようだ。

 私は瞬時に王妃から離れ鍵を拾いフレイに近づく。フレイを片手で担ぐように持ち上げる。いくら私が力持ちだと言っても相手は180を超える大の大人と160センチそこそこのか弱そうな女の子がかつげるわけがない。──しかし、私にはそれができるのだ。見ていたから……。



 王妃も咄嗟のことに言葉も出ない。フレイを担いだまま牢屋の入り口に走る。それをガイルが見逃すわけがなく、剣を抜き飛びかかってきた。

 あと1メートル!!ガイルの大きな体が一瞬のうちに背後につき剣が振り下ろされる。反応が遅れ振り向くことさえできない。──殺される……。



「やめなさい!!」



 王妃のけたたましい声が牢屋に響き渡る。ガイルは怯み、振り下ろした腕が止まる。──今しかない!!牢屋から飛び出し持っていた鍵ですぐさま鍵を閉める。



「正面玄関は危険だから、この階段を上がった先に右に曲がる通路があるから、そこから外に出なさい。城の裏道に繋がっているわ。」

「王妃様……」

「私は大丈夫。気をつけて」



 王妃に頭を下げ降りてきた階段を駆け上がった。周りの兵士がワーワー言っているが、もうそんなことはどうでもいい。

 階段を上り終え少し進むと右手に細い通路が見えた。くる時は気が付かなかった。気が張り詰めていたのだろう。私は言われた通りそこを曲がり小さな扉から外に出た。

 確かに城の裏手の方に出て来たようだ。ゆっくりと外に出る誰もいないよう──



「何者だ!!」



 振り返ると、兵士がタイミング悪くドアの横に立っていたらしい。兵士が剣を抜きながら持っていた呼子笛を鳴らそうとした。ここで他の兵士が集まってきてしまっては逃げ道がなくなる。私は持っていた剣で兵士の喉元を掻き切った。血飛沫が勢いよく顔にかかる。

 肉を切る感触……生暖かい血が剣を伝わり手に流れヌルッととする。気持ちが悪い……。



「──オエッ」



 フレイを降ろし壁の方に歩き嗚咽を出す。今朝からなにも食べていないのでなにも出ない。

 どこかで感じたこの感触……。何日か前に見た夢、夢の中でも私は人を殺していた。そう、こんな気持ち悪い感覚だった。

 後ろの方でフレイが私を呼ぶ声がした。そうだこんなところで立ち止まっている暇はない。



「大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫。ちょっと待ってて」



 私はさっき首を切った兵士のところへ行き、剣を交換し鞘も一緒に腰につける。



「僕の事は放っておいて1人で逃げてください」

「なんのために私が来たと思っているの?!絶対助ける!!」



 私はフレイを担ぎ裏門へ向かう。まだ私たちの情報が回りきっていないのか裏門には数人の兵士が周りをうろうろしている。これなら通り抜けられるかもしれない。

 兵士が1人になったところを狙い小走りで裏門を通り抜ける。──がそう上手くはいかない



「待て」



 若い20歳もいっていないだろう若者だった。「そいつは?」と声をかけられる。が、剣をぬくそぶりは見せない。



「城に入り込んだネズミだ。ガイル隊長に外に捨ててくるよう頼まれた。牢屋の方にもう一匹逃げ込んだらしい。すぐに応援をよこせとの事だ」

「わかりました!!」



 新入りだったのだろうか。なんの疑いもなく私の来た道を駆けていく。あっちには倒れている兵士もいる。バレる前に急いで街を抜け出さなければ。

 裏門を抜け少し行くと小さな家があり井戸あった。黙って使うのは忍びなかったが、さっきの兵の返り血を浴びて顔が気持ちが悪い。それにフレイにも水を飲ませてやりたい。



 家に誰もいない事を確認すると、井戸で水を注ぎ顔を洗いフレイにも少しづつ水を飲ませた。「ありがとうございます」と小さく呟く。

 水を飲んで少し元気になったフレイを見て安心したが、このままフレイを担いで街を走るのは目立ちすぎる。どうしようかと納屋を漁っていると



「なにしてるの?」



 子供が納屋に入ってきた。どこかで見たことのある顔……そうだ!!昨日、私にぶつかってきた男の子だ。



「あれ?お姉ちゃん、見たことある」

「昨日、あったね!!あのね!!えっと、これには事情が……」



 井戸を使ったことと、黙って納屋に入ってしまった後ろめたさで、何を話していいのかわからない。



「あ、あのぶつかった。おねぇちゃん。あの時はごめんなさい」



 子供が丁寧に頭を下げる。私も「私のほうこそ」と頭を下げた。



「それでお姉ちゃん何してるの?」

「ごめんなさい!!大きな荷物を運びたいんだけど、あまり見られたくなくて……なんか隠せるものとかないかなって……思って」

「大きいもの?ちょっと待ってね」



 子供が納屋の奥の方をガサガサと漁り何やら大きな袋を持ってきてくれた。



「こんなのしかなかった」

「ううん、ありがとう。でも返せないかもしれない……」

「大丈夫、これずっと使ってなかったやつだし。父ちゃんにも困った人がいたら助けてやれって言われてるから。おねぇちゃん困ってるでしょ」

「うん。ありがとう」



 子供から大きい麻袋を受け取り頭を撫でた。「えへへ」と恥ずかしがるのがまた可愛い。

 私はもらった麻袋を抱えすぐにフレイの元へ戻る。流石に大きいといってもフレイの体が半分入るくらいだ。仕方がないので、麻袋に足を入れ腰で結び上半身はフレイのマントで包み、再びフレイを担ぎ門へ急いだ。

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