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叶わぬ想い

 王妃の事が解決したので、もう王都にいる意味もない。私達は王様への謁見を願いし、控え室で少し待たされた。そこもまた、上等な革のソファーで座り心地が格段に良い。

 このまま王都で過ごすのも悪くないかもと頭をよぎったが、ララベルさんもなんとかしてあげたい。



 少しするとドアがノックされ王様のいる部屋に案内された。何度入っても緊張する──と言っても二度目なのだが。

 1回目と同じように王様の前まで行くと、膝をつき頭を垂れた。



「頭をあげよ。今回の働き見事であった。妻も大層喜んでおった」



 ゆっくり頭をあげ王の顔を見た。最初見た時は疑わしそうな警戒した顔つきだったが、今は優しい夫の顔になっている。それほど王妃のことを愛しているのだろう。

 


「王妃の頑張りがあってこそだと思います」



 私は一応謙遜した。



「褒美をやらんといけんな」

「それは頂いております」



 私は、腰にかけてある袋から、王妃にもらった小箱を取り出して王に見せた」



「そんなものでいいのか」

「これで十分でございます」

「欲のない者だ」



 そんな大層な物をもらったところで……だ。



「それでは失礼致します」



 フレイが立ち上がり振り返ってドアの方へ歩き出す。私もそれに続き歩き始めようとした時だった。



「時にフレイと言ったか。お前、あの天使の死神の息子のようだな」

「はい、実の父親ではありませんが養子として育ててもらいました」



 フレイは天使の死神という言葉にピクッと反応したが、すぐに冷静になり王の方に向き直り返事をする。

 私も王を見たが、さっきの優しい目とは違い、王としての目をしている。



「お前はあやつの時計を受け継いだのか?」



 時計?時計とはあのカムイから受け取った懐中時計のことか。

 フレイは胸ポケットに手を入れると、カムイから受け取った方ではなく、自分の方の懐中時計を取り出し王に見せた。



「私が父から受け継いだものはほとんどありません。物を持つ人ではなかったので。コレは私が死神になた時に国から支給された物です」

「そうか。時間を取らせた」



 フレイはもう一度頭を下げ部屋を出た。私も急いでフレイを追いかけた。フレイが嘘を言っている……理由があるのだろう。ここで話すべきではないのだろう。

 城を出ると城下が望めた。その一角で何か人だかりがあり、盛り上がりを見せている。

 私がそれを見つけ目を輝かせていると、フレイも何かを感じ取ったようだ。



「その前にちょっと寄りたいところがあるのですが、先に用事を済ませてもいいですか?」



 珍しい。もちろん反対する理由もない。私はフレイと共に歩き出した。

 着いたところは定食屋「天」だ。お腹の空き具合からして昼はとっくに過ぎている時間だろう。確かにお腹は空いているが「天」は夕食の仕込みで今の時間は暖簾が片付けられている。



「失礼します」



 フレイがドアを開けると、煮物の良い匂いが店内を包んでいた。

 仕込みをしていたカムイは私たちに気づくと、作業を中断し厨房から出てきた。



「どうしましたか?」

「あ、私たちもう隣街に帰ろうかと思って」

「そうなんですね……せっかくお知り合いになれたのに。また遊びに来てください」



 カムイは肩を落とした。フレイが死神ということは腕章でわかっているだろう。だから私がもう長くないという事はもちろん理解しているはずである。

 多分カムイの料理を食べることはできないだろう。もう一度故郷の味を味わいたかった。



「あの、あと、もう一つ」



 フレイが真剣な顔つきで一歩前に出る。



「あの時計のことは秘密にしておいてもらえませんか?えっと、できればなのですが……」

「……わかりました」



 カムイは不思議に思いながらも了承してくれた。



「それじゃあ」

「あ、ちょっと待ってください」



 店を出ようとすると引き止められ、カムイは奥の厨房に消えていった。少し待っているとパンパンになっている布の袋を渡してきた。



「これ、よかったら食べてください。昨日の残りも詰まってて悪いのですが……」

「ありがとうございます!!」



 最後にここの料理が食べれるなんて思ってなかった。これが最後の晩餐でもいい!!私は袋から漂ってくる香りに涎を垂らした。

 改めてお礼をいい店を出ると──ドンッ。小学生くらいの男の子がぶつかってきた。



「大丈夫?」

「あ、うん。ごめんなさい」



 男の子はしっかりと謝罪をすると前を走っていた友達に「早くー」と急かされ走っていってしまった。行く方向は私たちと一緒のようだ。

 人だかりにつくと「おお!!」と言う歓声とドンッという重い音が響く。人の間から覗き込むと屈強な男2人が力自慢をしているようだ。



 私の3倍いや、4倍くらいありそうな岩を持ち上げている。今は決勝戦のようだ。次岩を持ち上げられた方が優勝するらしい。さっきぶつかってきた男の子が固唾を飲んで見守っている。

 みんなが2人の男に注目する中、人の間を器用にすり抜けている小柄な男がいた。速い、こっちに近づいてくる。



 遠くの方から「ない!!」「あれ?!」と言う声が聞こえてくる。男が通ってきたあたりだ。

 男が私の前を通る時腰につけていた袋に手を伸ばす。王妃からもらった艾が入っている箱が入っている。艾には興味はないだろうが箱は涎が出るほど高価だろう。それを持っていると知っているわけではないのだが。

 取られる!!そう思っても、男の手が素早すぎる逃げる暇がない。そう思った時、フレイの手が男の腕を掴んだ。



「僕の大事な人に触れないでもらえませんか?」



 男は戸惑いながら必死に手を振り解こうとするが、男の力ではフレイはびくともしない。結局男は衛兵に連れていかれ、街の人から取っていた財布も無事持ち主のところへ帰っていった。

 結局、1人の男が岩を持ち上げ優勝が決まったようだ。私たちは衛兵から礼を言われると、そのまま馬を手配しララベルさんの待つ街へ戻ることにした。



 ゼクターさんの事も心配だ。ララベルさんが時々見にいってくれているとはいえ、いつ病状が急変するかわからない。

 半分くらいまでくる頃には陽も落ちて時々顔を出す月の光を頼りに進んでいく。暗くなれば馬も危ない。それでも止まる事なく走る。きっと……時間が惜しいのだろう。私の時間が──。



「少し休もう」

「でも……」

「お腹も空いちゃったし」



 フレイも「それなら」と馬を適当なところに止め、草の上にカムイにもらったお弁当を広げた。本当に昨日の残り物かと思うほど豪華だ。そして、フレイの事も考えてか、量もかなりのものだ。

 私は最後の「天」の料理を一口一口味わいながら口へ運ぶ。フレイも私の気持ちを汲み取ってくれたのか、一緒にゆっくりと味わいながら食べてくれた。



 お腹いっぱい食べ終わると、草の上に寝転がった。急ぎたいのもあるが、今馬に乗ったら胃が悲鳴をあげてしまう。

 フレイも隣に寝転がり一緒に空を見上げる。本当なら綺麗な星が満天に広がっているだろうが、今日はあいにく曇っていた。

 ──良かった。もしこれで満天の星の下フレイと寝転がっていたら、私の気持ちが抑えきれないところだ。またフレイを困らせてしまう。

 


 私は流れ星に願えないかと空を見上げた。

最後全て書きあげようとプロローグ直前まで書いたデータが飛んでしまいました…

2万文字書き直し…

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