チェストがβダンジョンになりまして ✖︎拳ひとつ編✖︎
ぴかっ
深夜、部屋に眩しい光が数秒だけ満ち溢れた後、その光が部屋に置かれた白い北欧風なカントリーチェストに吸い寄せられて行った。チェストは上段が二つに分かれて中断と下段の4つの引き出しがついており、その引き出しの一番下の下段の引き出しに光が集まり、やがて光は収まっていった。
⭐︎ベータ開始1日目⭐︎
「ハルー朝よー学校遅刻するわよー」
階下から母親の声が聞こえてぼんやりと目が覚めてきた、横にあるスマホの時間を見ると家をでる予定の15分前になっていた、急いで部屋のチェストから下着を取り押入れに取り付けた突っ張り棒に吊り下げていた制服をハンガーから取り外して急ぎ着てから一番下の引き出しを開け靴下を取り出そうと開けるも、引き出しの底がなくなって10段程度の階段が出来ており、下段に入れていた靴下やスカートが階段に散らばっていた。
「えーえーぇー!?」
とりあえず大きめのビニールバックを取り、散らばった靴下をその中に拾い集め、一番下まで降りて集め終わると目の前にスライムがいた。
「いーやー」
スライムに向けて慌ててバッグを振り回すとスライムが飛んでいって、光の粒となり消え、後には宝箱が落ちていた。
中身は魔石とコインがI枚入っていた。
コインを確認していると頭に声が響いて来た。
『ステータスウィンドが作成されました』
『ヘルプ機能が参照可能になりました。』
『ダンジョン狭間宮初トライ討伐者が現れました。
狭間宮ダンジョン初討伐記念品としてギフトスキル【無限大収納時間停止機能付き】を贈呈します。
巻物100 :
氷火土水風光闇影生活魔法各8
SSスキル 身体強化5 超成長3 隠蔽4 偽装2
魔道具:マジックバック 大中小各10数個
錬金壺1 錬金混ぜ棒1
隠し部屋作成キット 魔道テント 魔道ガス台
魔道蛇口(壁につけると水が出る)
『ベータ期間は3ヶ月を予定しております。
ベータ終了後も貴殿データーはそのまま引き継ぎ可能となります。またベータ終了後は半年インターバルをもちましてその間に改良されます。終了後には全世界に告知後、ダンジョン本サービスが各地で開始となります。』
ベータダンジョンの更なる成長をお楽しみ下さいませ。』
この頭に直接声が聞こえて来る違和感は慣れないわ〜それにしてもステータス?ギフトスキル?
「んーと……ステータス」
《ステータス》
狭間 遥乃 β《ベータ》テスター
14歳 女
level 2
HP30
MP50
攻撃力15
防御力20
魔防力20
素早さ10
幸運力999
スキル ♾️アイテムBox
確認は後にし、階段を駆け上がり引き出しから出てビニールバックを部屋に置き、そこから靴下ひとつを取り出し、魔石とコインを机の鍵付きの引き出しにしまいスクールバッグとスマホを手に部屋を出た。
あっという間に出なくてはならないギリギリの時間だった為、朝ごはんは簡単に食べてから学校に向かった。
学校についてクラスに入るとすぐさまHRが始まった。チャイムと共に先生がクラスに入り出席を取られてから連絡事項が話されてすぐさまI時間目の国語が始まった。休み時間を間に10分挟み4時間目まで行われたが、お腹の空きが半端なくて給食を血走った目で見てしまっていたらしく、友人らが笑っていたらしい。
今日は水曜で5限で終わる為、部活も入ってない私は15時くらいには帰宅したのだった。
夜ご飯まで宿題をするから部屋には来ないように母に伝えて夕ご飯まで4時間でダンジョン探索する用意をした。私には兄弟が大学生の兄と中1の弟がいるんだけど兄はバイトで帰宅は遅く弟は部活で多分夜食あたりに帰ってくるはず。
頭は防空頭巾とマスク、体はジャージを着てチャックを開けてお腹に雑誌を仕込み、靴は運動靴を履き、武器は拳ひとつと念の為、布団干しを分解したものが2m程度の鉄パイプをベランダから持ち出し、おにぎり3個を握って、懐中電灯と傷薬とバンドエイド、水筒には麦茶を入れて一応塩も袋ごとアイテムボックスに入れてスマホをポケットにしまってから布団干し用の鉄パイプを手に持ち、タンスを開いて階段を降りて懐中電灯を取り出しつける、薄暗い部屋を見渡すと4畳ぐらいの大きさの部屋にスライムが1匹ぷよんぷよんと震えて鎮座している。
バンバンバン
スライムに向けて連打をかましてみると
しゅるるんと消えて小さな手のひらサイズの宝箱が残っていた。中身は魔石とスライムの絵がついたメダルだった。たまにポーションが落っこちてきた。
拾った後、程なくスライムがリポップしてきたのて連打でまた倒し小さな宝箱を落とし中身は魔石とメダルの繰り返しとなり、慣れてくると3秒で1匹ペースで倒していたので4時間少したったあたりで500匹を超えlevel10となった。
宝箱から手に入ったものは全てアイテムBoxに入れた。
【持ち帰り品】
魔石:500個
スライム柄のコイン500枚
ポーション263本
《ステータス》
狭間 遥乃 β《ベータ》テスター 14歳 女
level10(次の経験値迄あと21)
HP110
MP350
攻撃力120
防御力60
魔防力80
素早さ100
幸運力1584
スキル ♾アイテムBox
最後にぽとんと光る宝箱が落ちてきた。
開けると一冊の本が入っていて、中を開いた瞬間煙となって消えてしまった。
『スキル【拳ひとつあればいい】が手に入りました』
ステータスを開いてスキルの【拳ひとつあればいい】を押してみると説明が現れた。どうやら武器を使わない場合に攻撃力はその場に出たモンスター数×100が攻撃力に上乗せされるらしいようだ。なおコチラの上乗せにはmpは使用しないらしい。
鉄パイプをアイテムボックスに仕舞うとブザーが鳴り声が聞こえてきた。
『次の部屋を開く事ができる討伐数を超えました、新たな部屋への扉が現れます。』
赤い扉が正面に現れた
だがこれ以上は時間も遅くなる上、夜ご飯の時間になる為に、ここまでにしておいた。
階段を登り外に出ると7時を少し回ったところだった。引き出しに入れていた魔石とメダルもアイテムボックスにしまい、体に入れていた雑誌と靴をアイテムボックスにしまい、布団干しよう鉄パイプをベランダに戻してから、タンスの引き出しをしまってドアを開けて階段を降りた。
「ハル姉、呼ばれる前に気がつくなんて鼻がいいな。」
「なんだ直一部活終わって家に着くまで走ったの?7時にいるなんて珍しいね。」
「あーなんか顧問のせんせーが用事あるらしくて、早めに終わったんだよ。なんかホームセンターに用事あるとか?」
「ふーん」
ダイニングテーブルに座ると夕食が並んでおり、急ぎ食べてから、風呂に入ると気がつくと9時近い時間になっていたので、明日も早いからとダンジョンに入るのは諦めて明日の支度をして休んだ。
⭐︎ベータ開始2日目⭐︎
アイテムボックスは外でも有効だったので、今日から学校に持っていく全ての教科書とノートや文具品、それに麦茶を入れた水筒をアイテムボックスにしまい学校には空のバックパック1つだけを背中に背負って行くことにした。支度の必要がなくなるのと、身軽に動く為にも荷物は軽くしておきたかった。
学校は6限まであったため帰宅すると時計は4時を示していた。麦茶を冷蔵庫から取り出し学校に持って行った水筒に追加で入れてから部屋に入り外のドアプレートに勉強中とぶら下げておいた。こうしておけば家族は部屋に入らないのだ。内鍵を閉め麦茶を入れた水筒をアイテムボックスにしまい、ジャージをBox内から出して身につけ、銅の剣を取り出し左手で握った。
チェストの引き出しを開け階段を降りるとスライムが1匹いたので今日は軽く殴り倒した後宝箱をアイテムボックスにしまい赤い扉を開いて先に進んだ。
扉を開くと緑の小人所謂ゴブリンが2匹棍棒を持ちぐるぐると部屋を歩き回っていた。
拳を握りしめホップステップジャンプで三歩で背後に回り込み腕を振り回して1匹殴り捨ててから足を回しI匹を壁に向け蹴飛ばすと、光の粒が散るように2匹が煙となって消え、宝箱が落ちてきた。
すぐさま次がポップアップしてきて、レベルが15を超えたあたりで500匹討伐を超えると、新たに次の黄色の扉が現れ次の部屋にはツノを一本生やした大人カンガルーサイズのうさぎが3匹ぴょんぴょん跳ねていた。
少し強くなったそれを右手と左手の拳を使い接近戦をこなす事500匹を超えたあたりでレベルは20を超えた。
ブザーが鳴り
『次の部屋を開く事ができる討伐数を超えました、新たな部屋への扉が現れます。』
緑の扉が正面に現れた
扉が現れたのでキリのいいところで終わりにする。帰り道にスライムとゴブリンがリポップしていたので殴り飛ばし出てきた宝箱は、これまた開けずにそのままアイテムボックスに、今日は出てきた宝箱は時間短縮で全てしまっていたので、階段を登りタンスの引き出しを出て、引き出しをしまってからジャージと剣と靴をアイテムボックスに仕舞い、部屋着に着替えてドアを開けて階段を降りていった。
アイテムボックス内で宝箱(空)と品物に分類されていた。
【持ち帰り品】
宝箱(空)1003個
魔石:1003個
スライム印のメダル2枚
ゴブリン印のメダル501枚
ツノうさぎ印のメダル500枚
ポーション149
《ステータス》
狭間 遥戈 β《ベータ》テスター 14歳 女
level20(次の経験値迄あと520)
HP240
MP740
攻撃力230
防御力120
魔防力160
素早さ200
幸運力3896
スキル ♾️アイテムBox
拳ひとつあればいい
明日の支度をしながらメダルをヘルプ機能で調べていたら、本サービスで使用可能なメダルと書いてあった。今はまだ眠らせておく品物なようだ。疲れた‥‥うん。寝よう。
⭐︎ベータ開始3日目⭐︎
今日は週末、学校から帰宅して、近所のスーパーで麦茶のパックと3リットル入る水の専用の空のタンクを3本購入し、純水と言うスーパーに常設された機械から入れて水を汲んでから外に出て木の影でアイテムBoxにしまい、100均で麦茶入れとコップを購入した。
買い物から帰ると麦茶入れに麦茶を作り冷蔵庫にしまい、早めに宿題とご飯とお風呂を終わらせ冷蔵庫から購入してきた麦茶入れを持ち部屋に戻った。土日は食事の時間以外は部屋に篭る為に準備なのだ。
先に進みモンスターを倒し、出てきた宝箱をアイテムボックスにしまい、緑の扉を開けると、黒い死霊の『ゴースト』が四匹部屋に浮かんでいた。
走り出しながら手前のゴーストを殴り、その奥左右に位置するゴーストを左右の手で殴ると煙のように消えてぽとんと宝箱を落とし残りの一匹を殴り消すと地面に置かれた宝箱をアイテムボックスにしまう。程なくして部屋に四匹ゴーストがリポッフする。
1時間超えたあたりでブザーが鳴り
『次の部屋を開く事ができる討伐数を超えました、新たな部屋への扉が現れます。』
緑の扉が正面に現れた
部屋に散らかる残りの宝箱をアイテムボックスに仕舞い込み、麦茶を取り出してゴクゴクと飲んでから次の部屋に向かった。
夜ご飯前には次のドアを開かせてから帰ろう。
ステータスを見る間もなく次の部屋のモンスターと対峙した。少し広目の五部屋目にいたのは、樹木モンスターの『ジュール』。
ジュールは五匹部屋を彷徨い歩いている。不意打ちを狙い一本目を連打して倒れ消え宝箱が落ちたところで他の四匹が赤く興奮状態に変わった。
葉っぱを撒き散らし、枝を叩きこんできたので、一匹ずつ叩いていたのだが、五匹もいたので、攻撃力が500追加となっていた。三打で一匹、次からは二打で二匹が最後の一匹は二打と回し蹴りで倒れ、消滅し宝箱が落ちてきた。
モンスターは葉っぱを手裏剣のように投げ飛ばし、枝は鞭のようにしなり体に多少すり傷をつけていたが、リポップが早すぎてポーションを飲む暇がなく、1分で5〜6セット戦闘となったので、20分後にはブザーが鳴った。
『次の部屋を開く事ができる討伐数を超えました、新たな部屋への扉が現れます。』
青の扉が正面に現れた
喉の渇きを潤すべく給水し散らばっている宝箱をアイテムボックスに仕舞い込むと扉を開き先に進んだ。
部屋には王冠を被ったオークが座っていた。
『ようこそ、小さきものよ、さあ、勝負ぞ!』
そう言うと走って此方に向かってきた。
⭐︎⭐︎⭐︎
真っ赤な部屋の中に大きなオークが横たわる。遥乃の姿は立ち去った為になく部屋には機械音だけがこだましていた。
『ベータダンジョン間宮邸 ボス部屋初討伐者が現れました。間宮邸ダンジョンボス部屋初討伐記念品としてギフトスキル【鑑定 極】が手に入りました。ベータダンジョンの更なる成長をお楽しみ下さいませ。』
⭐︎3ヶ月後⭐︎
『狭間様お疲れ様でした。ベータ期間はこれにて終了となります。貴殿データーはそのまま引き継ぎ可能となります。またこちらのダンジョンは本サービス開始まで使用不可となります。開始後は持ち運び可能な移動ダンジョンとなりアイテムBoxに収納可能となります。半年後のサービス開始の告知をお待ちくださいませ。』
半年後
空に文字が浮かび始めた。
『全世界各地にダンジョンが現れた。諸君健闘を祈る!』
そして開戦の火蓋はひらかれた。