カラスと隈
よろしくお願いします
ガァ!ガァー!
「ぐまぁー!くまぁー!」
「たのむ、勘弁してくれ」
ゴミ捨て場。目の前で突然と始まり、繰り広げられている情け無い争いに僕は。
期待している。
状況を説明すれば、数匹のカラスと一体のクマ(隈)の餌を巡った縄張り争いらしい。
荒らされていたゴミ袋の散乱具合は、この動物2人が殴り合いでもしただろう痕跡。そうであれば面白いのだろうけれど、実際はそうではない。
ただ単に、カラスが餌を求めて袋を破って漁っていただけだ。それを邪魔したのが隈だ。
「くまぁ!」
「クマってそんな鳴き方だっけ?絶対に違うと思うんだけど」
両手を上げ、面白おかしくカラスに威嚇している君だけれど、カラスは既に戦意喪失しているらしく。クマという脅威がありながら、背を向けて普通にゴミを漁っている始末。
確かに面白い絵面ではあるけど、街中のゴミ場を荒らされるのを見て放って置くことも出来ない。そろそろ追っ払ったほうがいいだろうか。
そうも考えれば、カラスを追い払おうとしている君は、こんな状況を他人事の様に面白おかしく見ていた僕なんかよりも、世間的には正しい行動をしているのかもしれない。だったら、僕の方が何倍も変な人間なのかもしれない。
考えるよりも行動している君。少しばかり、まともな人間だ。そう思ってしまうと、なんだか残念だ。
隈の行動を評して、出遅れていた僕は手に持っていたバックを後ろに回して助走をつける。そして、カラスを払う体制を取る。
その時だった。
「そうだカラス!烏合の衆よ!もっと漁れ!もっと食え!そして私に一番美味なものを寄越せ!」
「共犯者設定だったんかい!」
ばぁんっ!
「いでえ!」
君からの裏切りの設定によって、僕から君への尊敬と言う形が無駄になった。
だから僕は、思いっきり隈の頭にバックを投げつけた。
バサっ‼︎
カラスは無事に飛び去っていった。
「一件落着だな」
「ちなみに、私の隈と熊さんを掛けて…」
「それぜんぜん面白くない」
「あ、傷つきます」
君はまた、くだらないダジャレの説明をしようとしたので遮った。
ありがとうございます