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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

耽美奇譚

黄泉比良坂

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

白昼夢見ているほど、何だか奇妙な話だと思ってます。

正統派では無いですが、耽美奇譚に入れときます。

「私、強者と綺麗なものが好きなの。すぐに死んじゃいそうだから」

電車の中。駆け抜ける車窓だけが全てのこの空間で、女と俺は座席に腰掛けていた。周りに転がるのはかつて人だったもの。今は首と体が離されて、物言わぬ肉塊に変わり果てている。

傍から見れば異常な性癖なのだろう。だが異様にも同調している自分がいた。春に桜が散るのを楽しむ様に、生命を刈り取るのを楽しんでいる自分がいる。

「燃えるだけ燃えて、盛るだけ盛って、散って欲しい。そうすれば記憶に鮮明に残る。そうして伝説になる。永遠になる」

女と俺は返り血を拭おうともせず、ただ虚空にも前を見つめていた。

儚いものだ。人生とは車窓の様に瞬きの間に姿を変える。斬りかかって来た者達の人生を走馬灯のようだ。それでも何時か終わりは来る。停止と言うなの死が訪れる。

此奴らの人生がどんなだったかは知る由もない。だが死に様だけは鮮明にしっかりと脳裏に焼き付き離れない。そうして俺が生きている間は永遠になる。

「死体なんぞに興味はない。斬りかかって来た時が一番華やかで、美しい」

「ええ。その通り。私達の死に様もそうでありたい」


「んっ……」

「おはよう。次はもう終点よ」

目が覚めると、知人の女が一人いた。純白のワンピースは柄一つ、シミ一つ無く、光沢を放っている。女は春の日差しのような笑顔で、小首を傾げた。

周りに乗客は居なかった。この電車という舞台から退場し、残されたのは俺達二人だけ。さながら、白昼夢で死んで行った者達のように。

「結局、この土地まで来たのは私達だけだったね。途中で振るいに掛けられて、残ったのは私達だけ。そんな私達も此処で旅を終える」

電車が止まった看板には『黄泉比良坂』。成程、確かに旅は此処で終わりであるらしい。俺は女より先に席を立ち、自動ドアの前に立った。

「俺達は強くて美しかっただろうか」

「ええ。だから今この場所に居るのよ」

俺は女の手を恭しくとると、そのまま終着点に降り立った。足元には彼岸花が咲き乱れていた。

黄泉比良坂って、あの世とこの世の境目なんだそうで。

響きが好きなので、タイトルにしました。

(ターミナルでも良いと思いました)


車内の亡骸も、結局自分達でさえも、此処からは逃げられないんだろうな。と思います。

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