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浦島渡吉

作者: 灯宮義流

 浦島渡吉は驚いた。これまで現実離れした体験をしてきた彼ですら、この状況には困惑を隠しきれない。

 自分の住んでいた小説家になろう村に戻ると、村は都市になっていたのだ。

 それどころか、現代における最先端の技術を惜しみなく使用している。

 車は空を飛び、船はドリルで地中に潜り、床は全てコンベア式。

 携帯電話があれば殺し以外ならなんでもできる。そもそも浦島渡吉がここにいたころに、携帯電話などなかった。

「どうなっとるだが!」

 土地の方言で思わず叫んでしまった浦島渡吉の声に、背広姿の人間達が一斉に振り返った。



 そもそも、浦島渡吉は進んでこの村を出て行ったわけではない。

 ある日海岸を歩いていると、生意気な子供達にいじめられている亀を発見した。

 子供達にボコボコにされながらも彼は亀を助け起こした。途端、後ろから思いっきり殴られた。別の亀がいたのだ。

 しかもこの亀達は、ロシア軍に所属している特殊部隊のメンバーだったのである。

 目が覚めた時、彼は竜宮城なる収容所に連れてかれていた。

 竜宮城は極寒のシベリアの海底にある施設で、そこに連れて行かれた浦島渡吉は、過酷な重労働を押し付けられた。

 台車へ大量に詰まれたお菓子を店内に運ばされたり、賞味期限の切れそうな食品に値引きのシールを貼り付けたり。

 極寒の地では、金属製で出来ている台車の取っ手はおそろしく冷たかった。冷たいなんてもんじゃなかった。

 っていうかなんでここにいるタイやヒラメはみんな平気なんだよ、とか思いながら数年を過ごした。

 ある日、あります大辞典という番組に騙されて焼き豆腐を二万食頼んでしまったことで、浦島渡吉は竜宮城から追い出された。

 見知らぬ土地に放り出された彼は、流れるまま非合法的な組織を仲介してイカダを手に入れ、凍傷により手足合計七本の指を失いながら、ようやく帰ってきたのだ。



「貴様、そこで何をしている」

 都市の警備員がやってきた。

 最先端だから、登録されている住民以外がここにくるとすぐ警備員が駆けつけてくるのだ。

「オラッ、オラ……」

「オラオラ? てめぇ、俺様に喧嘩売る気か? この俺様に逆らうとは身の程知らずめ、鉄砲隊前へ!」

 警備員の後ろから、甲冑姿の女達が現れた。今警備会社は戦国時代ブームなのだ。

「てーっ!」

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ。

 ブローニングM2重機関銃の集中砲火を受けて、浦島渡吉は跡形もなく蜂の巣にされてしまった。

 彼の手には、何故か応募原稿在中と書かれた封筒が携えられていた。

リハビリに一作。四月まではめぼしい賞もないからなろうにも顔出すぞ。誰も待ってないけど。

つかお前誰だ? としか言われないですよね。

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