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プロローグ
人生、必ずしも順風満帆とはいかない。
何かを得るためには、何かを失うこともある。
楽しいこともある分、苦しいこともある。
生と死は常に隣合わせである。生きるという事はそういう事だ。
人類は昔より、恐怖や苦難を乗り越え、各々の望みを叶えてきた。
だが、一人ではそれらを乗り越えることはできないこともあるだろう。
『キミはひとりじゃない。』
この言葉は、私が幼い時分より強く記憶に刻まれているが、
教えてくれた人は言葉だけを残して、それはまるで――通りすがる影のように…あるいは、ふわりと消える光のように――あっという間に消えた。
その言葉を残した人に、まさか。再会することになるなんて。私は思いもしなかったのだった。
16歳の夏。7月。