『レブロの話』9話
「ダンジョン内には全く異質の環境があり、その中の生態系があります、魔獣や魔族総じてモンスターと言いますが、モンスターとはダンジョン内で発生するモノ、殆どの場合、モンスターはダンジョン外へ出る事はありません、出て来たとしてもモンスターは長く外では生きられないのです、つまり、我々冒険者の仕事は基本的にダンジョンに限定されるものであります、ここまででわからない事はありますか?」
なるほど、どおりで自然たっぷりの開拓村で魔獣に出くわすどころか、物語にしか出てこないわけだ、翌日の座学はダンディ職員が講師として説明を進めていた
「はい、外への被害がないのでしたら、放っておいても大丈夫じゃないのですか?」
俺は前世における、火山等と同じもの様な認識から、臭い物には蓋、祟らぬ神に障りなしに類する思考で手を上げ、ダンディ職員に質問をする、一瞬参加者がザワついた気がする、前世の転生物の知識から、頭の片隅にスタンピードがあるんだろうなと思いながらも…
「そこが大事な所ですね、殆どの場合出てこないと前置きしたのも唯一確認されている例外があるためです、それはダンジョンからモンスターが集団で狂った様に一直線に這い出てくる事があります、それを"スタンピード"と言います」
やっぱりあったか、スタンピード、ダンディな職員は見た目の紳士さとは乖離した様に感情、恨みを言葉に力を込める様、更に話を続けていく
「スタンピードの進行方向周辺では壊滅的な被害と、生態系に重大な異常が発生します、過去には幾つもの村落、都市、国がスタンピードにより滅んでいるのです、そして最終的にある地点にモンスターが集まり留まります、その大量のモンスターの死骸の下に、新たなダンジョンが発生するのです」
まるでダンジョンの産卵か、ダンジョンによる侵略の様に感じる、余りの職員の熱量、その前提を置いて考えてみた歴史と悲惨さに息が詰まる
「不幸中の幸いか、ダンジョン内モンスターを定期的に駆除する事で、スタンピードが発生しない事も解っています、今の所最も有効な対抗策です、良いですか?ダンジョン内から資源を持ち出す事は出来ます、巨万の富や地位を得た者もいます、しかし、ダンジョンは恵み等ではありません、悪夢です、我々冒険者は元より騎士団、果ては現在では都市その物がダンジョンの番人としてその上に設立されており、国家から支援金を得て、戦えない者達はその支援の為に経済活動を行っている、つまり国家の全てはダンジョンの恐怖に支配されているのです」
すっげぇ重い
ふと気になり、周囲を横目に見ても殆どの参加者は解っていた様で、開拓村での記憶が懐かしくも、選ばなかった農奴という道を、俺は若干妬ましく感じていた