『レブロの話』8話
パーティーメンバー同士の交流に関して、あれだけ配慮していた冒険者組合だ、食事の後に座学の講義にも何か意味があるに違いない、任務中に気を抜かないかどうかの確認か何かなのか
ただただ、貧乏性により久々の普通の食事に心奪われ、満腹になるまで昼食を取った、己の不甲斐なさから目を反らしつつ、俺は命と全財産が掛かっていると言う精神的支柱と、爪で手の甲の皮を捻ると言う物理的刺激を武器に、時折来る睡魔から座学を守り切り、1日目の講習を終え帰途につく
「おう、講習はどうだったよ?ためになったか?文字読めなくても何とかなってるか?」
開拓村では本格的に教鞭を取る者もなく、基本的にはそれぞれの家庭内の親兄弟、もしくは近隣の手の空いた面倒見の良い年配者が先達となり、知識を共有していくため開拓村から都市部への人材派遣を主に生業としているグドマンは、開拓村により知識レベルが顕著に違う事を知っている、そのためレブロが全く身にならない(ついていけてない)様なら、少しばかりフォローしようと考えていた
「めちゃくちゃためになってます、講習受けさせてくれて、本当にありがとうございました、今日お店の詰め所に詰めてても良いですか?勉強しようにも灯りが殆どないので」
俺は文字が読めないながら、講習で講師が説明している所を比較し共通する単語にマーキングと日本語でメモを書き込み、数字やダンジョン、アーガスト王国、冒険者などの頻繁に出てくる単語や文字列なら判別できる様になり、解読作業の様な勉強法が楽しくなっていた、あれだけ強大だった睡魔も何故か夕方には消え去り、持ち帰った資料で夜更けまで勉強しようと思っていた
「小僧、新しい事を始めた万能感と成長感で興奮するのはわかるけどよ、万全な体調も作れねぇ様じゃ頭空っぽな脳筋の方がましってなもんだぜ?」
やっぱり、この人の言葉には説得力がある、色々体験したか見てきたか、もしくは優しい詐欺師みたいなもんだな、明日も座学があって今日より強力な睡魔が育っちまったら、俺の手の皮で血を見るからなぁ、早目に寝ようかと若干赤く痣になっている手の甲を見てそんな事を思いながら俺は資料を脇に抱えて返事をする
「そうですね、軽くやるだけにしておきます、グドマンさんにとって俺が小僧なら、グドマンさんは小僧の読む教典ですよ」
ふとグドマンさんがお前呼びから、小僧呼びになった事を当てこすり軽返事をしてみる
「なんだぁ、教典ってのは?小僧俺を馬鹿にしてんのか!?」
しまった、この世界の教典って何て言うの!?
グドマンとしても本気で怒っているはずはないが、克服出来ない文化の違いを再確認し、レブロは小走りで逃げ去るのであった