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16:特殊探索者

 朔斗は特殊探索者キャンペーンの続きを読む。


 特殊探索者を雇用する際の最低日数は、今まで三日間で最長が六十日間でした。

 これ以上の期間を希望する場合、両者の間で再度契約を締結する必要がありましたが、三月一日から施策される新たな制度によって、最長雇用期間が五年と一気に伸びることになったのです。

 キャンペーンの対象となるのは、特殊探索者を一年以上雇用する方に限ります。

 そしてその特典といたしまして、特殊探索者を雇用するときに必要となる契約金や年俸を、WEOが最大三割負担することに決定いたしました。

 今回のキャンペーンにより、多くの良縁が結ばれることをWEOは期待していますが、探索者か特殊探索者のどちらかが一方的に契約を破棄する場合、違約金が発生しますのでご注意ください。

 ※キャンペーン期間は三年間となり、それ以後はそれまでの成果を考慮して、本キャンペーン内容を常設するかどうかの判断をします。


(ふむ、三割引きは大きいな。今は俺と恵梨香のふたりパーティーの予定で、俺たちが家族という点や、ふたりともあいつのためにエリクサーを入手したいという目的があるから、収入は合算してどっちがどれだけ貰うという分け方はしない。ただ、ここに第三者が入ってきたときは、俺たちの収入ががくっと減ってしまう。だからこそ、通常の探索者を仲間として探したり、特殊探索者を雇用したりすることも頭から外していたが……)


 特殊探索者に少し興味が出てきた朔斗はパソコンを操作して、現在仕事を探している特殊探索者のリストを見る。


名前:相川省吾

ジョブ:鍛冶師

ジョブランク:中級

スキル:中級鍛冶・リペア

ダンジョンクリア回数:最下級75、下級43

ひと言:ある程度の品質までなら武器の製作が可能。また、元の物よりも品質が落ちてしまいますが、緊急時には手早く武器の修理ができます。


名前:会田奈々子

ジョブ:キャリアー

ジョブランク:中級

スキル:ディメンションスペース・最下級水魔法

ダンジョンクリア回数:最下級19、下級82、中級35

ひと言:荷物持ちはお任せください! ダンジョンの道中では、水魔法で飲料水を出すこともできます!


名前:伊勢香住

ジョブ:製図師

ジョブランク:下級

スキル:下級製図・空間把握

ダンジョンクリア回数:最下級15、下級7

ひと言:ダンジョンのマッピングが得意です。ダンジョンを無駄なく歩いて、迅速な攻略を試みませんか?


名前:宇野涼子

ジョブ:道具師

ジョブランク:下級

スキル:下級製造・獲得報酬品質小アップ

ダンジョンクリア回数:最下級26、下級4

ひと言:ダンジョンをクリアしたときの報酬品質をアップさせたい方は、気軽に声をかけてください。


名前:江藤沙織

ジョブ:調理師

ジョブランク:中級

スキル:調理品質アップ・下級水魔法・下級火魔法

ダンジョンクリア回数:最下級57、下級62

ひと言:アイテムボックス所持しているパーティーであれば、ダンジョンを攻略中も美味しい食事をご用意できます。


(キャリアーの【ディメンションスペース】は、【ディメンションボックス】の劣化版だったか。たしか容量は特級アイテムボックスと同程度で、上級アイテムボックスの二倍だったはず。こうして見てみると、下級と中級のダンジョンには需要がありそうだ)


 朔斗は特殊探索者のリストを見るのが初めてで、なかなか面白いなと思う。


(調理師はなかなかいいな。とはいえ、俺は調理済みの食事を【ディメンションボックス】に入れていけばいいだけだから、わざわざ特殊探索者として雇う必要はない。製図師もいれば便利だな。うーん、なんて言えばいいのか、とりあえず戦力はなくとも、探索を快適にしてくれるジョブやスキルが多いってイメージだ)


 それからもしばらくリストを見ていた朔斗だったが、恵梨香の登録はもう少しで終わるのでは? と考え、次のページを見たら閲覧を止めておこうと判断した。

 しかし、彼が『次ページへ』という項目をタッチして、上から順番に画面を見ていたその時――朔斗の視線がとある特殊探索者の項目で止まってしまう。


名前:秋津サリア

ジョブ:ギャンブラー

ジョブランク:下級

スキル:六面ダイス・レアボス出現率特大アップ

ダンジョンクリア回数:最下級35、下級46、中級31

ひと言:ダンジョンにおいて、レアボスの出現率が上昇するスキルを持っています。報酬箱の中身を良質にしたい人は声をかけてみてください。注意点として、レアボスが出現しても勝利可能で、万が一のことがあってもクレームをつけない方に限ります。


(父さん母さんの命を奪ったレアボス……ダンジョンで稀に出るあれか。俺は今まで一回もレアボスと遭遇したことがない。レアボスを倒して報酬箱を開けた際、中身は明らかに良くなっているという話を学校で習ったし、実際にそうだと現役探索者の声も聞く。しかもそれは【獲得報酬品質特大アップ】よりも良くなるという。これがただの出現率アップであれば、ここまで気にならなかったが……)


 何かが上昇するアップ系のスキルは多岐にわたる。

 そしてどれだけ上がるかは長年の研究で明らかにされていた。

 まずは何もない状態を等倍とし、それに対し【小アップ】が二倍、【中アップ】が四倍、【大アップ】が六倍、【特大アップ】が十倍だ。


(レアボスのポップ率は、おおよそ百分の一と言われている。これが十分の一になると十回のダンジョンにつき一回レアボスが出現し、特別な報酬箱の取得回数が増加する。さらに、恵梨香のスキルで報酬箱から良品が出る可能性が常時十倍か……レアボスの危険度は俺にはあまり関係ないとはいえ、恵梨香のスキルのように、常時その恩恵にあずかれるわけではない)


 手を顎に当て、しばし思考を巡らせる朔斗。


(名前を見る限り、ハーフの女性か? もし仮に雇用するとしても、恵梨香もいるから男性より女性のほうが良かったし、その点はいいな。まあ男のほうが戦闘系のジョブを持っていることが多いから、どのみちサポート系ジョブ所有者は女性が多いか。いや、だがどうする? キャンペーン中とはいえ、どれだけの契約金や年俸が必要になるかも重要な判断材料だ。それに性格も……)


 これ以上この場で自分ひとりが考えても仕方ないとの見解に至った朔斗の肩に触れる手に彼が気づき、咄嗟に振り返る。

 朔斗の後ろにいつの間にかいた恵梨香が義兄に声をかけた。


「登録終わったよー、何を見ているの?」

「ん、ああ。ちょっと特殊探索者のリストをな。それとおかえり」

「ただいまー。特殊探索者? 雇うつもりはないって、以前言ってなかった?」

「そうなんだけどな……」


 歯切れ悪く言葉を漏らした朔斗は、パソコンのディスプレイに映る時間を確認する。

 義妹の卒業を祝うため予約したレストランに向かう時間が、あまりなくなっていることに気がついた。


(俺と恵梨香のパーティー登録も終わらせておきたいんだが……)


 そう考えた彼は受付に視線を向ける。


(並んでいる客が少ないな。あれなら待ち時間は考えなくてもいいだろう。そうなると特殊探索者のリストだけささっと見せてしまうか。こいつの意見も聞きたいし)


 脳内でこれからの予定を組んだ朔斗は、少し横にずれて自身の左に恵梨香を移動させた。


「この人の能力を見てくれ」

「ん? 秋津サリアって人?」

「そうだ」

「あとで詳しいことを話すが、ちょうど今日から特殊探索者の雇用キャンペーンが開始されたみたいでな、契約金や年俸が最大三割引きになるらしい。雇用年数によって割引率の変動があるらしい」

「そうなんだ。それでこの人ね……【レアボス出現率特大アップ】かぁ。さく兄なら問題ないんだろうけど、レアボスは怖いね」

「だな。ただ、今恵梨香が言ったように、俺にはそこまで影響ないと思う」

「うん」

「とりあえずその人の情報だけ見てほしかったんだ。予約時間までもうあまりないし、パーティー結成の手続きだけをして、レストランに向かおう。そこで今の話をしようか」

「うん! さく兄とパーティー組めるのが本当に嬉しい!」


 そう言って満面の笑みを浮かべた彼女は、思わず最愛の義兄に抱きつくのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ギャンブル性極振りのパーティになりそうだ
[一言] あぁ、サリアが赤い髪のひとか……
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