表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

【水晶龍は語る①】

 ダンジリア近郊、星空の丘にて。

 迷宮測量(マッピング)が早めに終わり、時間が余った俺は木の傍に寝転がり、ぼーっと空を眺めていた。

 こうするのもなんだか久しぶりな気がするな……ニーナが居た時は来る暇なんてなかったから。


 今頃あの子はどうしてるんだろう? 今日は休日だし、クロエと一緒に遊んでたりするのかな。

 遊んでるというよりは……多分競い合ってるって言った方が正しいかもな。

 そんなことを考えて、ふふっと笑って。のんびりとした時間を過ごしていた時の事だ。


 大きな影が太陽を突然覆い隠した。

 何事かと思ったら、それはすぐに通り過ぎ、辺りに響く鳴き声を一つ。

 それはきらびやかな青い水晶を見に纏う、とあるドラゴンだった。


「……クィスルか?」


 まさかこんなところを通るとは……彼も散歩中なのだろうか?

 なんとなく気になった俺は立ち上がって、クィスルに向かっておーい! と叫び、手を大きく振った。

 気付かないかもなと思ったが、彼は呼びかけに応えるかのように鳴き声を一つ。

 くるくると旋回しながら地上へと降りて来たのだ。


 しばらくすれば、ずしんとその身体が地面に着地。

 俺の方へと向いて座り込み、穏やかな声で話し始めた。


「"アゥロー・ニールーン"……あの時以来だな、人間よ」

「やあクィスル、まさかここを通るなんて思わなかったよ」

「今日は良き"ウィルドゥ"……良き風が吹いていたのでな、少々散歩をしていたのだ」


 クィスルはきょろりと辺りを見回し、フム、と一言言うと。


「"カルーン・リロゥ"……神の童、ニーナは居らぬのか」

「ああ、ちょっと色々あってな。説明するよ」


 俺はそう疑問を浮かべるクィスルに、事の次第を全て説明した。

 黄金の迷宮で起こったこと、ニーナが神の力を無くしたこと、そして彼女は今トランパルに居る事。

 全てを話すのは実に長い時間が掛かったけれど、クィスルは何も言わずに俺の言葉へと耳を傾けていた。


 そして全てを話し終わった後、クィスルはウウムと唸り、驚きを隠せない様子で語る。


「まさかあの小童の神がそのような行動に出たとは……しかし、よくぞ奴を封じてくれた。我からも礼を言わせて欲しい。感謝するぞ、"ニールーン"」


 ツァルの裏切りと暴走を止めたことに、頭を下げて礼を言うクィスル。

 だがその声は、少しだけ物悲しいもので。


「ああしかし……我が内通に気付いていれば、ニエレア様は亡くならずに済んだのやもしれぬ」


 クィスルは目を瞑り、至極残念そうにそう呟いていた。

 そういえば、俺はカルーンが"クィスルは元々エルピス側の者だった"と言っていたのを思い出す。

 よくよく考えれば、俺はクィスルやカルーンの関係をよく知らない。

 彼がどうしてエルピスに加担したのか、そして離反したのか……少しだけ興味が出て来た。


「クィスル、もし良ければなんだが……話してもらってもいいか? 過去に何があったのか」

「……ウム、良かろう。長い話になるが」

「ありがとうクィスル」


 俺はその場に座り込み、彼の話に耳を傾ける。

 クィスルは俺を見ながら、ゆっくりと語り始めた。


「あれは……そう、原初の時代。カルーンを始めとする大五神がパンドラの箱庭に封じ込められて、間もない頃の話だ」


 クィスルはふと空を見上げ、懐かしむかのように言葉を紡ぐ。


「我々の種族が人間と同じく"魔物"としてこの地に放り込まれた頃……我は生誕した──」


 ──これは龍の生き残りが語る、エルドラドが栄華を誇った時代の物語。

 歴史の観測者が語る、神々の時代の始まりと終わりの、その全て。──

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ