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彼はそんな僕の考えをよそに、

再びノートをかざした。



そこには時間をかせいでくれと書かれていた。



何をするつもりだ?



そんな疑問を考える間もなく、

彼は手を上げ先生に話しかけていた。



「先生、質問をいいですか?」


彼のこの発言にそれまで被疑者を見ていた

クラスメートの視線は一気に彼にそそがれた。



不気味な沈黙。



「言ってみたまえ」



先生が無表情にそう彼にこたえる間、

教室では変な緊張感がはしっていた。



「質問と言うか疑問ですが、

 クラスの人数を数えると41人、

 そこから弁護人の1人をのぞけば40人、

 約半数20対20でわかれる可能性はありました。


 つまり最後に同票になる可能性が」



その言葉に慌てて人数を数え始める者。

その言葉の意図いとをはかるもの。

息をのみ次の言葉を待つもの。

三者三様さんしゃさんようのリアクションを示す。



ただ1つ同じなのは誰も口を開かない事だった。



みんな見えない圧力におびえ口をつむぎ、

それでも口を開いた勇者に、

皆の心はつかまれていた。



その彼が臆することなく再び口を開いた。



「最後に1票をいれたのは先生ですか?」



それはみなが疑問に思った事だった。


そう彼はみなの代弁者だった。


それは人心掌握術じんしんしょうたさあくじゅつだったのかも知れない。



だがその意図がどこにあろうと、

彼はこの時、間違いなくみなの代弁者であり

リーダーだった。



「彼の言うとおりその可能性はありました。

 言い忘れていましたが、

 最後に半数割れした時、先生が一票を投じるという

 ルールだったと言う事です」



そのやり取りの間、

僕は彼が何をしようとしているのか、

はかりかねていた。



時間を稼いでくれと言った彼の言葉を考えれば、

時間を稼いでいるのだろうがなぜ。


僕は彼の意図もわからないまま、

時間を稼ぐ方法を思案しあんしていた。



わけもわからないまま人を従わせるカリスマ。

彼の行動にはそれだけの説得力があった。



「先生僕からも質問です」



僕は意を決しそう手を上げた。



一人目でないだけ、

そのハードルは下がっているはずだが、

僕の額からは嫌な冷や汗が流れ落ちていた。



死を前に全ての権限を持つ人間(先生)は、

たとえその本人にその意思がなくとも、

絶対的独裁者となりえる。



未熟な未成年だろうと忖度そんたくし口を閉ざす。



そんな絶対的絶望を前に始めに声を上げた彼に、

僕は脱帽だつぼう目眩めまいを覚えた。



 

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