表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

生け贄投票

 

果たしてそれが良かったのか僕は考える。



自分の無実を弁護してもらうのに、

自分の無実に投票してくれそうな相手を選ぶのは

当然だが。


それは同時に確実に無実に入れてくれる相手を一票

失うことにもなるのだ。


それにカンニングをした事がばれている

このケースの場合、争うのは無実ではなく

生け贄にされないための懇願こんがんだろう。


弁護士は無実に投票してくれる人でなくてもいいのではないか。


いやむしろ無実に投票してくれそうな人は

残しとくべきなのでは。



そんな考えがグルグルとめぐっていた。



これは何も他人事ではない。


いつ自分がその立場になるかわからない状況なのだ


他の生徒もそれぞれの打算に、

考えをめぐらしているようだった。


普通の状況なら誰もクラスメートを殺したいとは

思わないだろう。


それは倫理りんり的な事いぜんに、

彼を有罪にすればそれは同時に、

自分も殺される立場になるかも知れない現実を

突きつけられる事にもなるからだ。


だが生け贄が必ず選ばれるこの状況下で、

ライバルを少しでも早く減らそうと考えるのは、

人間のさがだろう。


そんな様々な思惑の絡んだ多数の目を受け、

被告の少年は壇上だんじょうで震えていた。


弁護人の生徒が必死で情にうったえかけ

被告人を弁護する。


幾人かの友達グループを証人として呼び、

どこか白々しくいかに良い奴かを熱弁していた。


そう、これは彼の罪の是非ぜひをとう裁判では

ないのだ。


それはそうだろう、カンニングしただけで死刑など普通ではありえない。


それがありえる裁判。


問われるのは個人の倫理観りんりかんと損得感情。


その天秤がどちらにかたむくかの裁判。


一人一人の打算による裁判なのである。


つまりは彼を生かすのが得か損か、

一人一人が考え導く問題なのだ。


カンニングからもわかるように、

彼はそれほど成績は良くなかっただろう。


それでも中間層の成績の人間からすれば脅威だ。


だが成績上位の人間からすれば、

ここで彼を退場させるのは得策だろうか。


生かしておけば、驚異となりえる中間層を

落とせるかも知れない。


そう言った打算の中、静かにその時はおとずれた。



投票の時間。



それぞれが有罪無罪を書いた投票用紙を、

2つ折にし投票箱に入れていく。

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ