人間牧場
動揺する一同を見渡し先生は続けた。
「もちろん先生も始めから先生だったわけではありません。
厳しい試験を突破し、つまりは勝ち残り、
先生になったわけです。
先生の同級生の多くは脱落し、
今はこの世に存在しません。
皆さんもそうならないよう勉学に励んでください」
先生の言う多くとはいったい何人なのか?
はっきり数字を示さないことで、
不安はますます伝染していた。
「それでは今日は残念なお知らせがあります。
こないだの追試でカンニングをしている生徒がいました。
マセ・徳和くん立ちなさい」
そう呼ばれた同級生のマセは、
前の席の生徒の背中に隠れるように身を縮めていた
。
「マセ・徳和、聞こえなかったのか!
立ちなさい」
その怒気に怯えるように身を震わせたマセは、
怯えるようにおずおずと立ち上がった。
「はいみなさん注目。
それではまことに残念ですが規則にしたがい、
これから生け贄裁判をおこないたいと思います」
生け贄裁判。
それは校則で決まった生徒たちが生徒を裁く裁判制度。
だがその本質は誰も知らない。
このクラスで生け贄裁判が行われるのは初めてなのだ。
生徒達のそんな疑問に答えるように
先生は説明を始めた。
「生け贄裁判のルールはいたって簡単です。
有罪か無罪か投票によって決める。
ただそれだけです。
有罪になれば生け贄として被告には、
食料になってもらいます。
一人一票、
被告は弁護人を一人クラスメートから選べます。
ただし弁護人は投票けんがありません。
それではマセくん弁護人を一人選んでください」
そう促されたマセくんは、
一番仲良くしている友達を選んでいた。