2.対面
2147年、激動の物語が幕を開ける3年前の話ーーー。
これは公には公表されておらず知っている者も各国首脳含めごく少数でしか知られていない場所である会議が行われた。
この会議には世界連合のトップ及びその幹部、現在も続いている大国の首脳、そして世界の人々が尊敬し畏怖する十英傑の面々が集められた。
もちろん話題はモンスターの事もあるが最重要事項は現在1つ空席となっている次期十英傑メンバーの決定だった。
「おいクソじじい!まだそいつは来ねぇのか!一体いつまで俺たちを待たせんだよ!」
「騒ぐなバルザード。おちおち本すらも読めん」
「おい、誰に向かって口聞いてんだ?オラァここでドンぱちやっても構わなぇんだぜ?」
「面白い。試してみるか?」
既に来ていた1人を除く他の5人はまた始まったといわんばかりに呆れながらも茶化すように眺めている。
「やめろ2人とも。仮に、やるにしても後にしろ」
正直、十英傑以外の面々は後にもしないでくれと願うような気持ちで息を飲みながら成り行きを見つめる。
十英傑は格が違うのだ。それこそ地形変化は当たり前。
時には戦闘の規模が大き過ぎて死人さえも出してしまった事もある。
が、十英傑は十英傑同士でないと止められない。それほどまでの戦力を1人が有している。
とそこで職員らしき者が来て、
「お待たせしました!到着されました!」と言った。
「ちっ!冷めちまった!」とバルザード。
助かった…と各国代表の面々は肩を撫で下ろす。
「萩野凛夜様入られます。」
今回は日本からの推薦で他の国や十英傑の面々もどんな者が来るのかなど情報が一切入って来なかったのでこれが初対面になる。
一同が入り口を見つめる中ドアが開くとそこにはここにいるメンバーと比べたら幾分も幼い少年が立っていた。
すると各国首脳の1人が、「ふざけるな!まだ子供じゃないか!これだから日本は甘いと言われるのだ!ねぇ!十英傑の皆さん!」
この男は今までもことごとく日本と敵対し自国が優位に立てるように振る舞ってきていた。そこでこの場の中で、いや、世界中で誰よりも決定権がある十英傑の賛同を集めようとしたのだ。
「いや」と、野太く低くそれでいて何故か良く通る声でその声を遮る者がいた。
その名はライアン ベルファー。
世界中でその名を知らぬ者はいないとさえ言われる十英傑の面々にも一目置かれる、筋骨隆々の大男だ。
いつもは元気なオッチャンという感じのライアンの様子を見て先程日本を批判した男、イ ヨンナム は疑問に思う。
何故こんなまだ小さな少年を庇うのか、と。
「バルザード。俺たちは何人がかりで勝てると思う?」
そんな突拍子の無い事を聞いて連合の面々は、
「まさか、こんな少年が十英傑数人をまとめて相手出来ると?と内心思っていたが、いつも強気なバルザードの返答が無い。
少し間がありゆっくりとバルザードが口を開いた。
「わからねぇ。」と。
少ない言葉だがそれはこの場の人々を困惑に引きづり込んだ。
「まさか!そんなはずはあり得ません!だって貴方達は…!」言いたいことは分かる。彼等はは世界で最も強く、気高く、そして唯一無二の存在なのだ。
「だが」とバルザードが口を挟む。「魔力量がハンパじゃねぇ。この年でこの魔力量。今でさえワシらと同等かそれ以上だがこれが成長すればどれほど…。」
驚愕の事実だった。あのライアンにここまで言わせる少年はどれほどのものなのか知りたい所だがそんな勇気は無い。
連合国議長が「では決定で?」と尋ねると、
「まあ、そうなるわなぁ」と苦笑いしながら返すライアンの声が重くその場に響いた…。