12.模擬戦②
「おおー、ここが食堂か〜、食堂ってかレストランみたいだな。見た目も洋風だし」
「そうだな!俺も初めて来たがここまでとは思わなかったぜ!」
「そうですね、食事は学生にとって大事な物の一つですからね。私の知り合いもここで働いています」
「さっすが小野川だね!ここで働いてるシェフなんて超一流なのに知り合いがいるなんて!そのコネで安くなんないの?」
「心配ないぜ朝日!ここの食堂は未来ある学生のためにあるんだぜ?そんなところで金取ってちゃお話しにならねぇ。驚くなよ?ここは全品500円なんだ!しかも大盛り自由!」
「500円なの!?安すぎない!?」
小野川は知っていたのか余り驚いてはいないが…
ぜ、全品ワンコインだと!?ば、ばかな!戦線の食堂ですら600円だったのに!しかも一流チェフだ。これは…食べまくるしかないよな!
そんな時、「兄さん」と凛とした声が聞こえた。ちょっと前に食堂入り口付近でザワザワしていたが…
「な、なんだい?紫苑」そう紫苑だ。
「まさか食べまくるとか考えて無いですよね?兄さんはいつも目を離したらカロリーの高い物ばかり食べますから。これからは私が良いと言った商品から選んで貰います」
凛夜にとっては悪魔の言葉だった。
「そ、そんな紫苑!こんな美味しそうな物がいっぱいあるのに食べられないなんて!少しくらい…」
「だめです。お母さまともお話ししてそういう決断に至りました」
凛夜万事休す。
と紫苑が初対面の2人の方へ向く。
「初めまして。萩野紫苑です。未来の凛夜の嫁です。これからお願いしますね」と微笑みながら言う。周りにいる者たちはそれだけでイチコロだった。
「ちょ!萩野!この人嫁とか言っちゃってるけど!?」朝日が喚く後ろで小野川が魂が抜けたような顔をしながらフラフラしている。
「いつもなんだ。余り気にしないでくれ」
「気にしないでって…。しかもこんなに可愛いなんて…。桜、どんまい!まあ聞こえてないだろうけどね」
「よ、嫁…」
「それよりご飯食べよう!」
「凛夜がそんなに興奮するなんて珍しいな!食堂の話した時もそうだったけどそんなに飯が好きなのか?」
「当たり前だ!」
食い気味だったからだろうカイが若干引き気味だ。
「兄さん、食べ過ぎはダメですからね」
「わかってるって!何食べようかな!」
「なんかあいつ飯の事になると性格変わるな」とカイも苦笑いだ。
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「どうだった、凛夜!うまかったろ?」そうカイが聞いてくる。
「最高だ…。この食堂で男子No. 1人気のカツ丼なだけはあるな。あの肉と米の相性が抜群だった」
「そうだろうそうだろう!この食堂特製ダレを使ってるらしいぜ!そりゃこんな一流チェフばっかりの食堂のタレなんだから旨いに決まってるよな!」
なんと特製ダレなのか。あわよくば分けてもらおうと思ったがおそらく門外不出だろうな。
「さあさ、あんた達いつまでもご飯の話してないで行くわよ。着替えなきゃ行けないんだから遅れちゃうわ!」
ああそうか。午後の授業は模擬戦だったな。ご飯の印象が強すぎて完全に頭から抜けていた。
「兄さま。私もクラスに戻ります。くれぐれもやりすぎないようにしてくださいね。では皆さんまた」と一礼し自分の教室に帰っていった。そういえば紫苑は今日が模擬戦では無いのだろうか。
「他のクラスと合同じゃ無いのか?」
「最初のうちは違うみたいですよ?まずは自分のクラスの人達と親交を深めて欲しいとか。多分、来月ぐらいから合同でするんじゃないでしょうか。その頃にはある程度皆さんのこと知れてそうですし」
なるほどな。そりゃ最初はクラスのみんなと仲良くなってから他クラスと、ってなるよな。
「そうなのか。教えてもらって悪いな小野川」
というと、小野川も含め周りの女子達が顔を真っ赤にする。何故だ?と思っていたらカイが「まずお前は自分の容姿を見るべきだな…」と呆れながら言われるのであった。
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「よし、全員集まったな。それじぁ、これから模擬戦をしてもらう。まずはこの会場の説明からだな。この会場は身体的ダメージは負わない。そのダメージは全て精神ダメージに換算されるからだ。安全装置みたいなもんだ。だから死ぬことはほぼない。」
『死ぬ』 その言葉が出た瞬間その場が静まり返る。まあたまり前だ。もちろん将来モンスターと戦うために技術を学ぶとはいえまだ一学生になったばかりの者が聞けば身構えもするだろう。
「といっても一様死ぬこともあるんだがお前達にはまず無理な話だから気にするな」
あちこちで気の抜けるような顔をする者が多数いる。
俺も初めて魔物を見たときはビビったもんだからな。
しかしだ。いくらなんでも俺は手加減せねばならないだろう。。。
じゃーまずはテキトーにストレッチでもしてくれ。適当とは言ったがちゃんとしないと体動かないぞー」
「「「はーい」」」
「なあ凛夜、この模擬戦って誰とでもやらんのかな?」
「さあな。でも俺は…なんか決まってるけどな。迷惑な話だよ全く」
「ああ言い忘れてたが相手は自分で選んで構わんぞ。ただし危ないから1ペアずつ試合は進めていくからな」
「だそうだ。俺はあいつとやるけどカイはどーするんだ?」
「俺か?凛夜お前あいつとやった後でも出来るだろ?だからその後やろーぜ!」
「ちょっとカイ!いくら萩野が特待だからって連戦は!?」
「そ、そうだよ、ね?萩野君」
チラッと件の人、郷田剛を見てみるとめちゃくちゃ睨んでいた。…何故だ?だがまあ、
「大丈夫だろう。いいぞカイその後やろうか」
「よっしゃ!」「まあ萩野が言うならいいけど…」「うん…」と三者三様の返事だった。いや二者二様か?何言ってんだ俺。
「じぁー早速始めんぞ。誰でもいいぞー」
良いとは言うが最初は誰だってやりたくないだろう。そんな時だった。
「僕達がやります」とこの1日しか経ってないクラスで1番人気があるイケメン君、沢田光輝が名乗りを上げた。
「ふむ、いいだろう。で、相手は?」
「竜頼むよ」と沢田の昔からの親友だという中田竜八とやるらしい。どちらもイケメンな事から早くもファンクラブが設立されたらしい。
「まじかよ光輝。1番初めに行くことはねぇだろ…」と若干嫌々だったが光輝の方が名乗りを上げてしまったからもう遅かった。
「よし沢田と中田だな。前に出ろ」
「まじかよー…はぁ。光輝、今度奢りだかんな」
光輝もふふっと笑いながら「分かったよ、約束だ」といい2人で拳をコツンとぶつける。
何あれカッケェ!俺もやってみたい!と思ったのは凛夜だけの秘密だ。
「準備はいいな。沢田は長剣、中田は槍。どちらも近接か。心配しなくてもこの中では身体的ダメージは入らない。思い切りやりなさい」
「大丈夫ですよ先生。俺は光輝と昔からやりあってきたんだ。今更緊張なんてしませんよ。なぁ光輝」
「そうだな今日は勝たせてもらうぞ!」
「いーや、俺だ!」
「よし、じぁ始め!!」
その掛け声と同時に2人は飛び出した。




