11.模擬戦①
朝露が辺りを漂い太陽の光で幻想的な風景を作り出す。そんな場には不釣り合いなナニかを振るう音が聞こえる。シュ、シュと剣を振るう。さらに剣を振りながらも常に魔力を身体中に流す。熟練の魔術師が見たら拝む程の魔力制御だ。剣の腕も底が見えない。これが凛夜の朝起きてからの日課だった。
やっぱり前線を離れて腕が鈍ったかな?などと考えているが、前線で戦っている人間からしたも剣を振るか魔法を使うかのどちらか一方でさえ凛夜には遠く及ばない。とそこで愛しの妹から声がかかる。
「兄さま。朝食の用意が出来ました。早くしないと冷めてしまいますよ」
「そうか、ありがとな。手を洗ってから行くよ」といい、凛夜が握っていた闇夜のように黒く見ただけでその辺の物と一線をかすのが分かってしまうほどの凛夜専用の愛刀をしまい手を洗いに行く。
席につきいつも通りいただきますと家族で食べ始める。
「そういえば父さんは?」
「兄さまにイタズラしようと企んでいましたのでベットにくくりつけて鼻と口をガムテープで塞いでおきました」とこともなげに言う。母さんも「あら、そんなことしてたの?当然の報いね」と言っている。
「そ、そうか」
死んでないだろうか?一様あれでも武術系のハンターだ。大丈夫だろう。…多分。
と考えていたら2階から何かが落ちて来る音がした。もしやと思い扉を開けてみると…そこにはタンコブを作りながらこちらに這ってくるバカがいた。目がガチだったが。多分息が出来ないからだろうが目が血走っている。
仕方がない、外してやるかと思い凛夜の膨大な魔力のほんの一部が消費され、凛夜の想像した通りの現象が起きるのと同時に父さんの鼻と口を覆っていたガムテープが切れる。ウインドカッターの無詠唱。それは風魔法の初歩の魔法の一つである。といっても凛夜が使えば常人が使う物とは一線を画すほどの威力なのだが。
「こ、こら凛夜!しっかり魔力制御しないか!父さんの唇がちょっとだけ切れてるじゃないか!」
いつも通りだな父さんは。この後に起きることも全くいつも通りだ。
「お父様、誰のおかげで息が出来てると思ってるんですか?先にお礼ではないですか?」と冷徹な、それだけで人が殺せそうな目でバカを見つめている。流石の父さんもその圧力に怖気付いた。
「す、すいませんでした…。これからはやりません…」と涙目になりながら言う。
「分かればいいのです」
…ここまでもいつも通りだ。いつものパターンだ。これだけな事をされているにも関わらず同じ過ちをこの男は犯す。もう救いようのないアホなのだ。紫苑もそんな事は分かっているが言っても無駄なので何も言わない。
そうこうしているうちに朝食を味合わずに流し込むようにして食べる我が父。あっという間に食べ終わり先に食べ始めた3人よりも早く席を立ちテレビを見始めた。
「よし。食べ終わったし学校に行って来るよ母さん」
遠くで「俺には!?」と言っている奴がいるが無視だ。
「はい、行ってらっしゃい。しーちゃんも行ってらっしゃい」
「行ってきます、お母様」
2人並んで登校する。いつものように目線を浴びせられながら。今日はなんかよく分からない奴と勝負しないといけないしな。何かしらハンデでもつけるか?などと考えながら登校する凛夜であった。
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「おう凛夜!おはよう!緊張しすぎて昨日は眠れなかったんじゃないか!?」
と朝からうるさいぐらいにくる。
「ああ、おはようカイ。いやぐっすり寝れたよ。小野川さんも朝日もおはよう。」
「お、おはよ!」 「お、おはようございます…」2人とも意外と早いな。この4人の中で1番来るのが遅かった。
「ねぇねぇ萩野とカイはどんな事が得意なの?あ、ちなみに私は武術系ね!あ、この子は魔法が得意なんだって!」
「俺は見た目通り武術系だぜ!」
そうだな。俺の場合どちらも出来るしな。まあ数合わせ的に魔法でいいかと適当に得意分野を決める凛夜。
「そうだな、どちらかというと魔法だな」というと朝日はぶすーっと、小野川はパァーーと顔に花を咲かせたような笑顔になる。
「えー、なんか微妙な反応ね。まさかどっちも出来るってわけじゃないわよね!?」
「ま、まあいいじゃん真由ちゃん!どっちだって!」と言っているがニマニマが止まっていない。そんなに嬉しいのか?
「えー、でもー」と駄々をこねる朝日だったがチャイムが鳴る。
「ちぇー、後で絶対聞くからね!」と言いみんな席に戻って行った。…まあ、前の席なんだけども。
ガラガラと扉を開け河野先生が入ってくる。
「んじゃー授業始めんぞー。えー、今日は午前は座面授業で午後から模擬戦だ。昼食はしっかり食べとけよ。全員2、3戦するつもりだからな」
みんなからえー、という声が漏れる。まあ確かに2日目から模擬戦をしかも複数回って結構しんどいよな。
「文句いうなー。カリキュラム組んだやつに俺が文句いたいぐらいなんだ。んじぁ早速始めだぞー。まあ今日は基礎的なもんだがな。えーまず、ルイス、魔法の属性は主になんだ?」
「はい、属性の数はーーーー」
なんか基礎的な事しかやってないな。こういことはだいぶ前に教えてもらった。正直今の段階で俺が学ぶような事はない、か。と、早速学生の天敵、睡魔が襲ってくる。く、これは!何という力だ!俺には対処のしようがな、い…、しょうもないコントを挟み眠りにつく凛夜であった。
「初回でいきなり居眠りとは良いご身分だな!」と言い河野先生が凛夜の頭に教科書の角という眠気覚ましアイテムの3本の指に入るであろう物をたたきつける。
ガン!というと「いって!」といい思わず立ち上がってしまう。みんなからも笑われて中々恥ずかしい。
教科書が当たったであろう場所を手で擦りながら座る。
「萩野、寝てたんだからもちろんこの魔法使えるよな?」といい教科書のある部分を指している。
えーっと、回復魔法のヒールか。お、丁度良いじゃん、これで頭治そう。
「できます」
「ほう、ではやってみせろ」
「凛夜、ほんとにできるのか?回復魔法だぜ?使用者が少ないって言われてる魔法だぜ?」とカイが心配してくる。
「大丈夫さ。まあ見とけって」
なんかめっちゃ見られてるんですけど。ていうか、カイが言ってた使用者が少ないって何?普通に使えるくないか?と思いながらも魔法を行使する。
「ヒール」というと赤く腫れていたおでこがみるみるうちに引いていく。
周りからは「すげぇ」や「綺麗な魔力…」などの声が聞こえる。
先生も「はぁ、もういいぞ」という。もしかして早速学院長から聞いたのだろうか。俺の正体。
「萩野、次からは居眠り気を付けろよ」と言うと授業に戻る。
「凛夜すげぇな!」
「まあ誰でも練習すりゃあれぐらいできるよ」
「見てみろあいつの悔しそうな顔」
カイが見ている方を見てみると昨日俺に喧嘩振ってきた郷田剛がこっちを睨んでいた。
「いいきみだぜ!午後の模擬戦でもやっちまえよ!」
なんかカイがイラついている。多分俺が親のコネとか言われたからだろう。友達思いのいい奴だ。
「ああ、任せとけ」と指をグッとする。
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「えー、午前の座面授業はこれで終わりだ。昼食を食べて運動着に着替えたら体育館に集合だ。以上」といい出て行った。
「やっと終わったぜ!凛夜一緒に飯食いに行こうぜ!食堂が俺たちを待っている!」
「あ、私たちも一緒に行っていい?」朝日と小野川だ。
「ああ、もちろんだぜ!」
「そうだな。あと紫苑も呼んでいいか?」
「紫苑?誰?」と2人の頭には?マークだ。そうか朝日と小野川はまだ会ってないのか。
「俺の妹だ。血は繋がってないけどな」
「萩野に兄妹なんていたんだ!でも血は繋がってないってこーとーはー、桜ピーンチ!だね!」
「もう!やめてよ!そんなんじゃないよ!」と赤くなっている。
「もうちょいかかるから先行っててだって。行こうか」
4人で先に食堂に向かう事にしたのだった。




