聖女様は異世界から来た最強賢者とスローライフを送りたい
炎が肌を焦がし、肉を焼く。
熱すぎて、感覚なんてもうない。
罵声が響く。
「聖女の皮を被った魔女!」「最高神官を惑わした罰だ!」
ふざけんな。
襲ってきたのはあっちだ。
不意に、女神の声が聞こえた。遅ぇよサボりかよ。
『助かりたいですか?』
当然だろ。
『では、異世界から転移してきた最強賢者の彼女になりなさい』
なんで!?
『彼は転移者の常としてチート能力を与えられ、魔王を倒し世界を救う者。
しかし!強烈な寂しんぼ……早々にチョロインが現れなければ、また元の世界に戻ってしまい、この世界は破滅です』
いいんじゃね?勝手に破滅しろや。
『あなたを襲った最高神官……実は魔王が化けてます』
やります!
『よろしい。では、自然な出会いへ進みましょう』
―――かくして私は、暴漢に襲われた所を最強賢者に助けられた。ぱっと見、平凡な少年だ―――
『まず手つなぎ……いえ、強引に腕を組んでしまいなさい』
女神の声に従うと、彼の顔が真っ赤に!ちょっと可愛い。
一緒に食事する。
『お口にアーンしてあげなさい』
照れくさそうに、しかし素直に口を開ける彼。なにこの警戒心のなさ。守ってあげたい……かも?
『頰のクリームをペロッとしてあげなさい。はい、明るく笑って!″これ美味しい!″とでも』
おお!慌ててるぞ戸惑ってるぞ、「特に他意はないんだよな。そんなチョロインなんてお約束があるわけ」とか自分に言い聞かせてるようだぞ。
いいねぇウブい青少年!ご馳走様っす。
宿に泊まった。
『さぁいよいよです!ここで一気に距離を詰め、2度と″元の世界に帰りたい″などと思わせないようにするのです』
ラジャっ。
『では、今から風呂に背中を流しにいきなさい』
慌てまくる最強賢者。
「テンプレ展開とかそんな都合よくっ」また自分に言い聞かせてる……
首筋も耳も真っ赤。イヤもう可愛い!可愛いわっ!
『そろそろ良いでしょう。背中に胸を押し付けて誘惑して下さい』
……あ。倒れちゃった。
急ぎすぎじゃないの女神様?
『こっ、これも計画のうち!さぁ、ベッドに運び込み一緒の布団にくるまるのですっ』
翌朝。
生まれたままの姿で目を覚ました少年は、モジモジと前を隠した。
「そ、そういうことは、お互いもっとよく知り合ってからの方がいいと思う……」
ああもう!こんな可愛い子を戦闘に!?とんでもないっ
女神様!魔王討伐は別の方にお願いしてね!
―――その後、最強賢者は1度も闘わず、聖女様と平和なスローライフを送ったという―――
『次からは彼女をあてがうのは止めましょう』
3日で元の世界に帰られました。
『次は女の子を転移者にしてみましょう』
開いたお店が繁盛し、「そのままのキミが好き」と言ってくれる彼氏ができました……魔王?知りません。
『次は同性愛者(♂)を転移させてみましょう』
魔王が別の意味で殺されて、世界は平和になったそうです。