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勇者を討伐した魔王様は魔力を封じられた為に解雇される。  作者: 吉樹
第7章 『ドワーフ国編②』
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第2話 「魔王様、悪夢にうなされる」

前話のあらすじ:風邪を引いて寝込みました。

「……ん。ここは……」



 目を覚ました私のぼんやりとした視界に最初に飛び込んできたのは、木造の古びた天井だった。

 次第に視界がはっきりしてくると、ここが手狭な小屋だということがわかる。

 しかもいまの私は手足を拘束されている上に半裸状態であり、両足が強制的に開かれるといった屈辱的なポーズを取らされていた。


 既視感……というか、記憶の片隅にこの光景があることを、私は思い出す。



(これは夢……か)



 病気の時ほど悪夢を見るとはよく言ったもので。

 私も現在進行形で……悪夢の中にいるということなのだろう。



「──目が覚めたようだな」



 身動きひとつできない私に、覆いかぶさってくる人物がいた。

 この時の記憶では、いち兵士に変装していた暗殺者──ウーアである。


 あの時と同じ状況だったが……


 しかしあの時とは、状況が違っていた。

 この場には、彼以外の者たちの姿もあったのである。



「カッカッカ! お前さんも男を知れば、男の良さが分かるじゃろうて」



 腕を組んで睥睨してくる幼女──白エルフ国の王、ドラギア。

 その彼女の傍らには、悔しそうに服の裾を噛む女エルフ──護衛騎士のレイ。



「悔しい! クレアナード様の初めては、私が貰うはずですのに!」



 彼女が悔しがる一方では、別の一角にも見知った連中の姿があったりする。



「クレアナードさんの痴態……」

「バカ兄! 混ざろうとか考えないでよね!」



 呆けた様に呟く青年エルフ──ビトレイの頭を、妹の少女エルフ──マリエムがバシっと叩き。



「ふわぁー……これから、俗にいう18禁っていう展開なんだよね!」

「こらクソガキ。てめぇが見るのは、まだ早ぇ」



 興奮気味の狼少女──ウルの目を押さえる形で、狼女──彼女の姉であるレアンが窘める。

 動けない私の顔傍にしゃがみ込んでくるのは、ローブに身を包む人族の女──森の魔女のアルペン。



「クレアナード様。ここに、痛みを和らげるのと快感を増幅させる魔道具があります。どちらを使いますか?」



 さらには。



「むう……クレアナードの最初の男になるのは、この俺だというのに……」

「くくく。ならば、お前も混ざればよいではないか。なんなら、妾も混ざろうぞ」



 黒エルフ王ドーエンスや艶母レインクレイの姿まであり。

 その傍らには近衛騎士のデモナもいたのだが、こちらは私の状況など興味ないようで、顔を背けるのみだった。


 まあ、いずれにしても。


 この場にいる誰もが、窮地にいる私を助けてくれる素振りは微塵もなく。

 皆が皆、私が蹂躪される様を楽しみにしている様子だった、



(カオスだな……)



 現実では、まずありえない状況。

 悪夢が生んだこととはいえ……



(アテナ……お前はどこにいるんだ……)



 この場に姿のない彼女に語り掛け、拘束されていたはずの手を伸ばす。

 所詮は夢なのだから、何でもありということなのだろう。

 とはいえ。

 夢なのだから、伸ばしたところで何も掴むことなどあるはずもないのだが……



(……ん)



 なぜか、伸ばした手が誰かに握られた感触が伝わってきた。

 なぜか安心感に満たされた私の視界は──この空間は、ぐにゃりと闇の中へと。



 ………



 ……



 …



 場面は代わり。

 私は、魔王の間にて義弟であるマイアスに腹を貫かれていた。



「義姉さん……貴女にはここで死んでもらいます」



 今回はそれだけではなく、背後から私の頭を片手で握りしめてくる者さえ。



「この程度か? このままだと、我に頭を握りつぶされてしまうぞ?」



 獣王コルモンデスの手に力が込められてきて、私の頭蓋骨が悲鳴を上げてくる。

 とはいっても、この頭痛は獣王の攻撃によるものではなく、単純に風邪によるものだろうが。



「ぐふふ……殺す前に、子を孕ますのも一興じゃあないか?」



 でっぷりとした腹を抱えながら、醜悪な笑み浮かべてくるは愚王バモンズ。



「だらしないねぇ。アンタとは一度、酒を一緒に飲みたかったけど残念さね」

「……残念とか言ってて助けないのは、さすがだよ姉さん」



 双子の竜人姉妹──ライカとレイカは遠巻きに私を見据えており。



「ふん。所詮キサマなど、その程度の器ってことだ」



 玉座にてふんぞり返っている簒奪者──ブレアが私を睥睨。

 その傍らにいるローブの男──ドバンもが、私に嘲笑を向けてくる。



「あの時に、私と手を組んでいないからこうなるのですよ」



 と、赤子の鳴き声にそちらに視線を向けると。

 いつの間にかそこには、赤子のゾーイを抱く私の妹──ラーミアの姿が。



「お姉さまがいる限り、私はずっとその背中を見続けないといけないんです」

「だぁかぁら! ここでラーミア様のためにも、すぱっと死んでくださいッス!」



 陽気な態度でラーミアの肩に手を置く密偵──リングがウインクひとつ。


 ……結局のところ。

 先程とおなじく、誰一人として私を助けてくれる素振りはなく。

 誰も彼もが、私の命が奪われる様を今か今かと楽しみにしているようだった。



(……ラーミア。お前の言葉が、一番堪えるよ……)



 たとえ悪夢の中の戯れ言とはいえ、妹にそんなことを言われると、本当になんとも言えない感情が……



 ………



 ……



 …



 女王蜘蛛の間にて真っ向から激突するは、漆黒の双剣を手にする黒の宣教師と大剣を操る獣人──勇者レオ。

 これまたありえない展開といえるだろう。

 なにせあの時、この場に(勇者レオ)はいなかったのだから。



「だ、ダミアン……っ?」



 私はというと。

 あろうことか、全幅の信頼を置いているダミアンに組み敷かれていたりする。

 その横には興奮した様子の人族の少年──マーズがおり、ダミアンと同じく私にのしかかっていた。



「クレアナードさん、貴女には感謝しています。だからこれは……お礼なんです」


(こんなことがお礼になるわけないだろうが……っ)



 そう思う私の手足は、ドワーフの男たち──ダイ国の双子の王子、ハルゼスとハダックに押さえつけられており、動くに動けない。



「ガキども。クレアナード殿を使って大人になるがいい」

「兄者と俺で押さえてるから、安心しろ」

「詰めが甘いぞ。まだ頭が動くだろうが」



 そう言って私の頭すらがっちりと掴んできたのは、ラオ国王子のグーボ。

 さすがに屈強なドワーフ3人に押さえつけられては、魔道具で底上げも出来ていない女の身では、もはやどうにもならないだろう。



「キシシ……クレア氏。ギーノくんも貴女の味を知りたがっていますよ」

「ギーノ様に身も心も委ねようよ。きっと、人生観が変わるから……!」



 不気味な笑みを見せるザオームが肩に担ぐキノコからは触手がうねうねと蠢いており、うっとりした表情でプリメラが力説してくる。


 また、そんな一方では。



「にゃはは~♪ ふたりとも頑張れ~♪」

「いけいけ~!」



 宙に浮遊するネミルと空を飛翔する妖精──レビーが、無責任な応援を黒の宣教師とレオへと。

 そんな声援を意に介さない様子で、男たちは黙々と激突を。



「クレアナード様」



 見たことがないほどに、私を見下ろしてくるダミアンの顔は──”男”だった。


 少年のあどけない面影はなく。

 だからといって欲望に飢えた野獣というわけでもなく。

 ただただ真摯に純粋に、どこまでも私の心の奥底を見透かして来るかのように、ダミアンは私を見下ろしてくる。


 静かでいて熱い視線を受ける私は──思わず、気圧されてしまう。


 ここが悪夢の中ということはわかっているのだが……

 こんなことを、私の知るダミアンがするはずがないのだが……

 私はこの時……

 ダミアンに、一瞬なりとも()()()()()()()()()()……



(馬鹿な……私は……)



 恐怖の正体はわからなかったが、それでも彼に恐怖したという事実は、かなりのショックだった。


 そんな私の動揺が繁栄されてか、世界に歪みが生じ始める。


 それでもなお、この場にいる者たちは何ら気にした様子もなく、それぞれがそれぞれのことを事務的に淡々としていた。

 夢の中のこととはいえ、あまりにも異質であり、破たんも著しい状況だった。


 動揺に心揺れる私は、私に覆いかぶさるダミアンから視線を外すことができず。

 恐怖すら抱かされる視線を突き差して来るダミアンが、拘束ではない理由で硬直する私へと、ゆっくりと手を伸ばしてくる。


 私は、思わずぎゅっと目を瞑り──



「──やれやれ」



 ふいに、その場に聞き慣れた声が。


 アテナの姿は見えなかったものの、その場にいた者たちの動きが一斉に止まる。

 時間が止まったかのような錯覚に陥りそうになるが、所詮ここは夢の中なのだから、何でもありということなのだろう。



「クレア様。そろそろ起きる時間ですよ。二度寝以上に何度も寝たのですから、もういいでしょう?」



 世界が、大きくぐにゃりと歪む。

 私の混濁していた意識は、虚空の彼方へと──



 ………



 ……



 …



「……ん。ここは……」



 目が覚めると、見慣れた馬車内の天井が視界に入ってきた。

 わずかに頭がぽーっとしているのは、寝起きということもあり、病み上がりということだからなのだろう。



「おや? お目覚めになられましたか?」



 私の傍らで読書をしていたアテナが、本をパタンと閉じて私に目を向けてきた。



「アテナ……」



 上体を起こそうとする私を、近づいてきたアテナにやんわりと制される。



「まだ少し熱があるようですね。もう少しお休みになられたほうがよいでしょう」



 いまの動きで額から落ちたタオルを手にとった彼女は、洗面器に入れられている水に浸してから、絞ったタオルをまた私の額に当ててくれた。

 ひんやりとした冷たさが気持ちよく、私は再び夢見心地となってしまう。


 と、そんな時、レングルブを連れたダミアンが車内へと入ってきた。



「あ! クレアナード様! お目覚めになられたんですね!」



 嬉しそうに破顔してくるものの、私は夢の出来事を思い出してしまい、一瞬だが身体が硬直してしまう。

 そんな一瞬の私の様子に、アテナは目ざとく気づいたようだった。



「ダミアンさん、これから汗をかいたクレア様の着替えをしますので、席を外してもらえますか」

「あ、はいはい! わかりました! じゃあ俺は、外にいるんで!」



 何ら不審がる様子もなく、ダミアンは外へと出ていく。



「今のは、ちょっと不自然すぎやしないかい?」



 苦笑してくるレングルブに、アテナも溜め息ひとつ。



「咄嗟のことだったので、良い言い訳も思いつかなかったので」



 そう述べてから、私へと視線を落としてきた。



「それでクレア様。何かあったのですか?」

「……夢で、ダミアンとちょっと、な……」

「なるほど」



 私の様子がおかしいことに納得を見せてきたアテナは、私を労わるように頭を優しく撫でてくる。


 

「病気の時にみる悪夢は、えてして現実では起こり得ないことです。なので、気にするだけ無駄というものですよ。所詮は、夢の中の出来事なのですから。病気で気持ちが弱くなっていることも、多分に影響しているのでしょう」

「……そうか」

「それに、夢というのは記憶の羅列に過ぎないのですから、たまたま身近にいたダミアンさんの形をとっていただけ、ということです」

「そういう、ものか……」



 言われてみると、確かにあの時(夢の中)のダミアンは、妙に男らしかった印象があった。

 しかも、私がダミアンに恐怖するなど……

 だがしかし。

 ネタバレさえしてしまえば、どうということもなかったというわけである。



(これで、ダミアンとも普通に接せられそうだな)



 安心した私は、風邪を完治させるべく、安らかに瞳を瞑るのだった。




 ※ ※ ※

 



 どうにか風邪から回復した私は、折れた剣の代わりとなる剣を新調するべく、イフの店に訪れていた。


 別にどの店でもよかったのだが、魔道具を預ける際に、ちらっと陳列棚を見た時に、けっこう気に入った感じの剣が何本かあったのを思い出したからである。


 アテナは静かに私に付き従っており。

 レングルブはキョロキョロとショーケースの中を物色中であり。

 そんな彼女をなぜかビクビクした様子でダミアンがちらちらと見ていた。



「んー……これにするか」



 何度か素振りをした後、その感触を確かめてから、私はその剣をカウンターへと持っていく。

 待ち構えるのは、職人ではなく商人顔となっているイフ。

 


「まいどありー!」



 満面の営業スマイルで接客してきた彼女は、私が新調した剣を鞘に納めたのを見計らったタイミングで、カウンター越しに身を乗り出してきた。



「それでね、ちょっと相談なんだけどさ……」

「ん? 魔道具は売らないぞ」

「ちょ、言う前から拒否とか」

「ダミアンから聞いていたからな」

「んー……そこをさぁ、どうにかなんないかな? ウチとしても、大奮発して買い取らせてもらうし!」

「これらは、彼らとの信頼の証でもあるんだ。だから、おいそれと売るわけにはいかないし、私としてもそのつもりはまったくない」

「信頼の証……って言われちゃあ、こっちとしても引き下がるしかないかぁ」



 私の態度が一貫していることに心底残念そうに肩を落としたイフは、しかし商魂たくましいようで、表情を切り替えてくる。



「でもさでもさ! それら魔道具の専属の整備士はウチにしてほしいかな! それくらいならいいでしょ!? 値段も他店と比べてさ、だいぶ勉強するからさ!」

「んー……まあ、それくらいならな」

「オッシャー! 交渉成立ね!」


 

 ガッツポーズを取って嬉しさを表現する彼女をしり目に、私は陳列棚に置かれている短剣を物欲しそうに眺めているダミアンに気が付いた。



「そういえば……ダミアン、短剣を新調するんじゃなかったのか?」



 私のこの発言は、ドワーフ国に来た際に新調した短剣は、どうやら黒の魔人との戦闘時に刃こぼれをしていたらしく、近いうちに短剣を新調したいと言っていた旨を彼から言われていたことを思い出したからだ。


 いくらドワーフ国産で品質に優れた短剣だったとはいえ、さすがに相手が魔人では、強度がもたなかったというわけだろう。


 私が寝込んでいる間に新調したものだとばかり思っていたのだが、いま見ると装備する短剣がまだ新調されていなかったのである。



「え? ああ……はい。そのつもりだったんですけど……ちょっと、予想外の出費がありまして手持ちが……」

「予想外の?」

「くくく。われに貢物をしてくれたんだよねぇ」

「貢物?」

「あー! いやいや! その件はクレアナード様には関係ないことなんで!」



 何か知られたくないことでもあるのか、ダミアンはレングルブの口を塞ぐ。

 私はますます訳が分からなくなるものの、事の成り行きを見守っていたアテナが、静かな口調で言ってきた。



「いずれにしてもクレア様。ダミアンさんの戦力を充実させることは、必須事項ではありませんか?」

「……まあ、確かにな」



 今度のことも考慮すると、何が起きるかわからないのが冒険者家業なのだから、味方の戦力アップを怠るわけにはいかないだろう。

 


「ダミアン。言ってくれれば、それくらい私が用立てるぞ。いくら必要なんだ?」

「いやいやいや! クレアナード様にご迷惑をかけるわけには──」



 遠慮してくるダミアンを遮るように、商人顔のイフが割り込んでくる。


 

「クレアさんたちはご贔屓さんだから、かなーり勉強しまっせ!」

「ほう? そういうわけだ、ダミアン。お前が遠慮することはないぞ」

「で、ですけど……」

「くくく! 男らしくないねぇ。ここはデーンと身構えたらどうだい?」

「誰のせいだと思ってるんですか!」

「さあねぇ」



 微妙な関係性を露呈させたダミアンとレングルブを前に、アテナがわざとらしく溜め息を。



「すっかり仲良くなられたようで。少しだけジェラシーですね」

「仲良く……か?」



 いま気づいたが、レングルブは見慣れないネックレスをしており。

 案外、似合っているな、と思ってしまう私だった。 




 ※ ※ ※


 ※ ※ ※




「お前という奴は!!!!」



 ダイ国の王城の一室にて、国王の怒号と張り倒す鈍い音が響いていた。


 怒りの形相である壮年のドワーフ──ダイ国現王に殴り倒された王子──ハルゼスは、口元から流れる血をそのままに、苦々しい顔で父親を見上げる。



「父上のお怒りは、ごもっともです……」

「待ってくれ父上! 兄者に落ち度はないと俺は思う! 想定外だったあのアンデットが──」

「黙らんかハダック! 儂はお前の発言を許しておらんぞ!!!」

「──っ──」



 兄を庇う弟を一喝して黙らせた父王は、床に片膝をつく息子(ハルゼス)を睨み付けた。



「情けない……! 自分にまかせておけと胸を張っていたお前は、どこへ行ったのだ!! それがこの体たらくか!?」

「……面目、ありません……」

「アンデットとか言っていっていたが、そんな言い訳などはどうでもいい。重要なのは《神の槌》が誰の手にあるかということだ。ハルゼスよ、答えろ。なぜ我が国に《神の槌》がないのだ?」

「それは……ザム国の王女が、手にしたからかと」

「その通りだ!」



 片膝をつく息子をさらに蹴り飛ばし、父王は吐き捨てる。



「在り得ぬ事態だ! 三か国協議──《神の槌》を手にした者が統一王となるなんて合意など、我が国が統一国となることが前提だと思っていたからだ。でなければ、合意などするはずがない」

「……ごもっともです」

「何よりも! 我がダイ国がドワーフ国を統一することは、先祖代々からの悲願なのだ。それを私の代で潰えることになるなど……先祖たちにどんな顔を向ければいいと思っているのだ!」



 怒り心頭の父王は尚も怒りが収まらないようで、さらに息子に蹴りを叩き込み。

 蹴り飛ばされたハルゼスは、しかし傍らにいる弟のハダックに支えられていた。



「ハルゼスよ! 無論、このままで済ませる気はないのだろうな?」

「……もちろんです。すでに、保険もかけて動いておりましたので」

「ほう? つまりお前は、後れを取ることがあると思っていたのだな?」



 眼光が鋭くなる王に、しかしハルゼスは臆することなく静かに首を振る。



「勘違いなさらぬよう。物事には、絶対という言葉はないのです。用心に越したことはなく、常に一手二手、先を見据えることで、最悪の事態を免れるのです」

「ふむ……いいだろう。お前の保険とやら、聞かせてもらおうか」

「はい。現在ザム国は、戴冠式への準備で忙しいことでしょう。つまりは、それが狙い目ということです」

「ほう……」

「ですが、我等の動きに義はありません。三か国協議の決定を覆すのですから。ゆえに、非難を浴びることでしょう。ですので……父上の覚悟をお見せくだされ」

「覚悟……ときたか。何をする気だ?」

「正真正銘の最終決戦ですよ。もはや我等には、それしか道はないので」



 にやりと笑うハルゼスの姿に、ハダックはごくりと唾を飲むのだった。




何か良からぬ事を仕出かすようです。

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