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観察結果と今後の方針





 数日ほど人面樹を観察した結果わかったこと。


 人面樹とはなにをどうしようとも意志の疎通はできそうにないということだった。


 あの口は獲物を食べるだけでなく声のようなものを発することがあるのだが、紬にはあれが意味のある言語だとは思えなかったのだった。


 仮になんらかの意味があったとしても紬にはその声が持つ意味を理解できない。


 そもそもここは異世界である。都合よく日本語が通じるなどという可能性はまず無いだろうというのが紬の出した結論である。


 そもそも日本語が通じたとしても今の紬は喋れないのだ。せいぜいやっても動かす魔法での筆談がいいところだろう。


 そうなると相手に書いた文章を見せる必要があるわけであるが、この人面樹の目は本当に見えているのだろうかと疑問に思う紬であった。


 なにせ見た目は赤い光が揺らめきながら光っているというだけなのだ。視覚を持っているのか怪しいものだと紬は思っている。


 どちらかといえば視覚を持たなかった初期の頃の紬のように音や振動で獲物を感知しているような節がある。


 顔のない背後の獲物を普通に捕えていたことや、試しに動かす魔法で葉っぱを顔の正面まで持っていてもこれといった反応がなかったことからの予想であるため確度は高いだろう。


 結局のところ紬は意思疎通を諦めたわけであるが、そうなると思考のほうはこの異形をどのようにして倒すのかというものへと移行することとなる。


 種のようなものを手に入れることができる機会があるのならば、そんなチャンスをみすみす逃す手はないというのが紬の考えだ。


 今まで観察したところ、人面樹が使っていると思われる魔法はいくつかある。


 毒の果実や獲物を捕らえる根っこ、もしかすると声を発することでさえ魔法である可能性もある。


 今まで出会った異形であれば魔法を使った時は飛び散るスパークで把握が可能であったが、この人面樹は一見なんの変化も見られないのである。


 このことに対する紬の見解は、紬と同じように魔素に対する耐性が高いのだろうというものだ。


 魔素を含む水を普通の植物は火花を出して枯れてしまうが、いくらかの耐性を持っていることで異形化に至るまで魔素を溜め込んで人面樹となったのではないかと紬は考えている。


 つまり耐性が高いためにバロメッツ同様にスパークを伴わない魔法の行使となっているのだろう。


 今までの異形は魔法の兆候として判り易いものがあったので対処しやすかったという部分がある。しかし今回の相手はそれがないため、もしもまだ確認していない魔法があった場合の対処が難しい可能性がある。


 危険は避けたいところだが紬の種のようなものを手に入れるという決意は変わらない。


 紬は模索する。人面樹を倒すために必要となる策を……。

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