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人面樹




 東の樹海にて紬が見つけたその大木は異形の存在だった。


 人面樹。


 その大木の幹には目や口が存在していたのだ。


 とは言ってもあくまでも幹にある()()の部分が目や口に見える程度であって人の顔そのものがついているわけではない。


 ただ単に紬には人面樹という呼称以外にぴったりな表現が他に思いつかなかったというだけである。


 正確に表現するのならば、顔のようなものがあるように見える大木、というのが正しいだろう。


 けれども目の錯覚で顔のように見えるというわけではない。その口が獲物を喰らう姿を紬は確認しているのだ。


 紬がその大木を最初に見つけたときの状況はというと、初めて訪れる東の樹海で目新しい物がないかと思いながら探索していたのだが、地面に落ちている果実を食べている動物に目がとまったのだった。


 そしてその果実が成る大木を見つけたわけであるが、ちょうど食事中だったのだ。


 地面に落ちていた赤い実を口にした(イタチ)が泡を吹いて倒れたかと思うと、地面から根が飛び出してきてその体を捉えた。


 気がつけば幹のうろの奥には怪しく揺れる赤い光が灯り、口のように大きく開かれたうろに捉えた鼬を放り込み、そのまま咀嚼までして見せたのだった。


 まさかの展開と自分以外で初めての植物の異形の姿を目の当たりにして驚いた紬。


 どうやらこの人面樹、自身の赤い果実で獲物をおびき寄せているらしい。


 しかもその果実は毒でも入っているのだろう。毒を食らって動けなくなった獲物を根っこで捕まえて捕食するという恐ろしい行動を行うようだ。


 バロメッツ以外で初めての植物の異形である人面樹。


 その食事風景からその能力を予想するならば、果実の毒か、はたまた根を操ったことからバロメッツと同じように動かす魔法を使うなんてことも考えられる。


 他に紬が気になる点はというとやはり種のようなものを持ってあるかどうかという点であろう。


 今までの経験から動物の異形は種のようなものを持っているものだと考えているが、この人面樹のような植物の異形というのは初めて遭遇した。


 種のようなものを持っているのならば是非とも手に入れたいところではあるが、自分も相手も植物の異形だ。もしかすると、万が一の可能性で意思の疎通が取れたりするのではと儚い希望を持ってしまう、ぼっちな紬。


 ただいきなり接触を試みるのも危険だろう。とりあえずはしばらく観察をしてからにしようと決めた紬。


 その作業にも慣れてきて作る手際の良くなった魔法で作った望遠鏡を覗き、遠方からの観察を始めるのだった……。

 




 この作品の投稿を始めて三ヶ月となります。


 最近仕事が忙しくなかなか執筆時間が取れていないのですが、なるべく更新が滞らないようにしたいと思っていますので、これからもこの作品をよろしくお願いします。

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