熱を見る魔法
巣穴から動かす魔法で引きずりだした角兎の死体を見ていた紬はあることに気がついた。
生命活動が終わり死体となった角兎からは徐々に熱が失われつつあるのだが、体内のとある一点には逆に熱が集まりつつあるという不可思議な現象を、四号の熱を見る目が捉えたのだ。
これはもしやと思いつつ、黒曜石のナイフをバロメッツの動かす魔法で振るって角兎の腹を開き、その熱源を確認してみることにした紬。
そこにあったのは紬の予想通りに種のようなものだった。
今まで気が付かなかったが種のようなものは熱を発していたようだ。
とはいえ、最初にこの角兎をみたときにその存在に気が付かなかったあたり、種のようなものが持つ熱は体温を超えているわけではないようである。
それでも倒した異形のどこに種のようなものがあるのかすぐに判別することができそうなので地味に便利だなと改めて思う紬。
そういえば、剣鹿が風狼の群れのなかからボス以外の個体から、小さいながらも種のようなものを抜き出していたなと紬は思い出していた。
異形と呼べるような特徴があったわけではないやや大きめの個体からでも種のようなものが見つかることがあるという事実。
剣鹿はすべての死体を確認していたようだったが、この熱を見る魔法を使えばそんなことせずとも小さめの種のようなものを探すことができるのではないかと紬は考えた。
小さめの種のようなものでも新たな能力を得ることができるかどうかはわからないが、それを取り込んだ鹿は角や体に変化があったのだから全くの無意味ということにはならないだろう。
今までは異形の相手の時にしか種のようなもののことを考えていなかったが、普通に見えた相手のなかにも種のようなものを持つものがいたかもしれない。
拠点づくりの時に近づいてきた肉食動物たちの死骸は特に確認することなく農地の底に埋めてしまったが、今度からは念の為に熱を見る魔法で種のようなものを持っていないかぐらいは確認することにしようと思った紬であった。




