開拓
ある日の樹海、その一角で木々が倒れゆく。
その倒木の原因はバロメッツの羊たちだ。魔法を用いて木々を倒していっている。
カルデラ湖から下山したあたりの樹海を切り拓き、樹海での新たな拠点となる場所をを作ろうというのが紬の目的である。
拠点を作ったとして紬が恐れているのは巨大蜘蛛のような存在が奇襲を仕掛けてくることである。なので身を隠して近づくことを防ぎ、樹上からの奇襲を防ぐためにまずは周辺の木々を倒していっているのだ。
木を倒すのは動かす魔法で制御下においたカルデラ湖の水を浸透させることで楽に行うことができている。
あっという間に樹海の一角が開拓されていった。
その開拓の際に発生した倒木の音を聞きつけた肉食動物たちが近づいて来たこともあったが、眠りを誘う煙の魔法で難無く切り抜けることが可能だった。
察知の魔法のような特殊な能力がなければ対処することが難しいのが眠りを誘う煙の魔法だ。
異形のものでない普通の動物たちが相手ならば紬は圧倒的有利な条件で立ち回ることができる。
便利な魔法の恩恵を肌で感じ、サラマンダーから得た眠りを誘う煙の魔法はかなりの掘り出し物だったな改めて紬は思っていた。
一通り周囲の木々を倒した後、紬はその場の環境を整え始める。
今までカルデラ湖と樹海の中の岩場の影で行っていた農作業をこの新しい拠点でも行おうと紬は考えている。
ちなみに新しい農地を耕すときに用いたのは水を生成する魔法とバロメッツの動かす魔法だ。
水を生成する魔法で作り出した水を土に浸透させてから、動かす魔法でかき混ぜることで耕したのである。その方法だと土壌は泥となってしまっているが、魔法で作り出した水は時間が経てば光へと変わって消えてしまう。なので泥から水は消え、残るのはよくかき混ぜられた土壌となるわけだ。
その時に眠りを誘う煙で処理した動物たちを、作物の栄養とするために耕した土に埋めてしまう。というよりも泥状にしている間に底に死体を沈めてしまったわけである。
こうして新たな拠点に農地を用意した紬。農地以外の拠点の設備も徐々に充実させていく予定である。