水の生成
紬が使ったサラマンダーの種のようなものから得た新しい能力とは、水を生成する魔法だった。
両生類であるサラマンダーが水場からかなり離れた樹海の中にまで縄張りを広げることができたのもこの魔法があったことも要因の一つだったのかもしれないなと紬は思った。
この魔法で生成した水が蜘蛛から追われるこの現状を打破するために必要だったのだ。というのもカルデラ湖の水はすでにその殆どを使いきってしまっていたという理由があった。
蜘蛛の動きを妨害するために樹海の木々にカルデラ湖の水を浸透させてきた。そのため四号が担当していた水塊は残り僅かだ。これでは逃げるために打てる手札がなくなってしまう。
そこで水を生成する魔法によって新たな水を用意して、それをバロメッツの動かす魔法で操るつもりなのだ。
水を生成する魔法は正しく発動した。
何もない空間から水が溢れだす。
その量は流石に無制限で作り出すことはできないようだったが、四号が樹海に持ち込んだ水塊の量よりは多くの量を作り出すことができた。
あとはこの作り出した水をバロメッツの動かす魔法で操るだけであるが、この水を操ることができるのかどうかというのが心配であった。
だが動かす魔法で操ることができる条件、紬が影響を与えた魔素を含むという条件はちゃんとクリアすることができていたようで生み出した水も制御下におくことができた。
水を生成する魔法は空気中に含まれる魔素に働きかけて水を生成しているようなので、生成された水には紬が影響を与えた魔素が十分に含まれていたということのようだ。
消費してしまった手札の補充はこれで完了。
あとは今出来る限りの妨害を行うだけである。
おそらく蜘蛛の視界から完全に逃れることが重要となるというのが紬の考えだ。
蜘蛛の視界を塞ぐことで岩の壁を出現させるのを妨害し、見えていない間に追跡を振り切るというシンプルな作戦であるが今取れる手は正直なところこの程度しかないというのが実状だ。
紬は眠りを誘う煙と生成し制御下においた水をバロメッツの動かす魔法で後方へと広げることで蜘蛛の視界を塞ぐ。
紬が使った魔法である眠りの煙の方も影響を与えた魔素が含まれているようでバロメッツの動かす魔法の影響下にくことが可能だった。
煙だけでは視界を塞ぐような密度にすると範囲が狭くなってしまい視界を塞ぐような範囲とすることができなかったが、水を霧状に広く拡げること、そこに均等に眠りを誘う煙を混ぜ込むことで、視界を塞ぐことが可能なだけの範囲と強引に抜けようとすれば眠りの状態異常を与える霧となっていた。
眠りの霧によって蜘蛛は紬の姿を見失った。
さらに樹海の中に拡がった霧に触れてしまうと眠りを誘われ夢の世界へ誘われてしまう事になってしまうだろう。
こうして四号は蜘蛛の追跡を振り切ることに成功したのだった……。
今年最後の更新です。
年始の更新頻度は未定となっております。
と言いつつ毎日更新していくような気がしますが……。
まあ、執筆時間が取れたら更新すると思います。
では来年もまたこの作品をよろしくお願いいたします。
皆様、良いお年を〜