新たな能力
岩の壁のせいでやや距離が詰まってしまったが、まだ追いつかれるような距離ではない。
ただ同じようなことが続いてしまうとなると困ったことになってしまう。しっかりと岩の壁にも早めに対処しなければいずれ追いつかれてしまうこととなるだろう。
追いかけてくる蜘蛛のいる後方と壁がはられるかもしれない前方の両方に注意を払わなければない。
なので紬はカルデラ側に戻ってきている羊達の並列思考を四号へと振り分ける。これで少しは処理速度が上がって対処もしやすくなるだろう。
さて、逃げながらも次の手を考える紬。改めて今できることを考える。
今現在四号が使える魔法はバロメッツの動かす魔法とサラマンダーの種のようなものから得た魔法だけである。
カルデラに帰らなかった四号には角兎の察知の魔法を使えない。
ただサラマンダーの種のようなものから得られた魔法は眠りを誘う煙の魔法だけではなかった。
サラマンダーもまた巨大蜘蛛と同じように別の異形から能力を奪っていたようだ。
むしろ唯一紬が目にしていた眠りを誘う煙の魔法はどうやら別の異形から奪った魔法だったらしいと、改めて種のようなものから得た能力について理解を深めようとしていた紬は気がついた。
サラマンダーの本来の能力は状態異常に対する耐性を得ることのできる魔法のようだ。
その魔法によって眠りの煙を逃れ、本来の持ち主から能力を奪っていたらしい。
他にもいくつかの魔法をこの種のようなものは秘めていた。サラマンダーが倒した異形の数はなかなか多かったようだ。
そのいくつかの能力の中でもこの現状を打破し、蜘蛛から逃げることを可能としそうな魔法があることに紬は気づいた。
その魔法を軸に紬は逃走の計画を練り直す。
ぶっつけ本番になってしまうが仕方がない。蜘蛛から逃げ切るために紬はその新たな魔法を使ったのだった……。