バロメッツ
吾妻紬は困惑していた。二度と戻らないと思っていた視界が唐突に開け、非常識な現実を目の当たりにすることとなったのだ。
高い視線から見降ろして、視界に収めた自身の身体は間違いなく植物に見える。ではこの視界を有しているコレは……?
はたして吾妻紬の知識の中にこの不可解極まりない植物の知識は存在していた。
その名はバロメッツ。別名、スキタイの仔羊。
吾妻紬がその名を知ったのはとあるパズルゲームがきっかけだった。
受験勉強に根を詰め過ぎていた紬の様子を見かねた友人が気分転換に遊ぼうと誘った落ちもの系対戦パズルゲームのキャラクターの中に居たのを、このキャラ可愛いと思った紬がネット検索をかけたのだ。
その時最初に出てきた画像とキャラのギャップが強烈だったことをよく覚えていた。
その最初に見た画像の姿こそ、今現在の吾妻紬の姿であった。
羊のなる木。
半分動物で半分植物。
地面から伸びた茎の先端は仔羊のへそに繋がっている。
紬はその木に成った仔羊の視界を有し、そこから見降ろしていたわけである。
そして視覚だけではない。嗅覚も聴覚も触覚も、おそらくは味覚さえもこの仔羊の五感を感じ取ることができるようになったのだと紬は直感した。
なにがタンポポっぽいだ。綿毛どころではない。羊が生えてくるような植物だ。
その大きさは余裕でメートル単位の巨体である。縮尺さえ判っていたならば決してタンポポっぽいなどと考えることはなかっただろう。
改めてその外見を説明すると、まだ毛も生え揃っていないような仔羊が長い茎の先端とへそのあたりで繋がっている。逆側である茎の下側からはぎざぎざとした細身の葉が放射状に何本も生え、生い茂っている。それが今の紬の姿の全容であった。
生まれ変わった先は羊のなる木、バロメッツでした。
…うん、タイトルに最初から書いてましたね。
バロメッツの認知度がどれほどのものか分かりませんが知らない人は画像検索にでもかけてみてください。だいたいあんな感じです。
ようやく五感を取り戻した紬さんのスローライフが本格的に始まる予定です。
ぼちぼち更新していくのでこれからもよろしくお願いいたします。