紬さんの生存日記11
七十日目
今日の日記は見ての通りひと味違います。
いつもの石版ではありません。以前に挫折した粘土板です。
レンズで起こした火種のおかげでようやく粘土板に着手できました。
今度の粘土板はしっかりと焼成までやってあります。
まだまだ納得がいく出来とは言い難いですが、こうして日記を書くぶんには問題なく使えるくらいのものは作れました。
本当は植物から作る紙に挑戦したかったのですが、植物を煮るという工程を行うための鍋のようなものがなかったので断念。
流石に樹脂の立体印刷で作ったものを火にかけるのは駄目でしょうから……。
なので今は土器の作成を研究中です。土器の器なら火にかけることも問題ありません。
この粘土板もその研究の過程で作れた中でわりと上手く出来た方のものに書き込んでいるわけです。
やはりまだ焼くときの温度が十分でないせいか壊れやすい感じがします。まあ、私の知る現代の陶磁器なんかを比較対象にしてしまうとそう感じるのは当然と言った感じですね。
大きな原因は火力が足りていないということだと思う。今は野焼きと呼ばれる手法で作っているわけですが、これは日本だと縄文時代や弥生時代の土器の製法だったはずです。
それ以降の時代だと窯を使っての製作法に移行していったのだと記憶しています。
ということでカルデラ留守番組の羊たちを総動員して窯を作ろうと思っています。
作ろうとしているのは穴窯と呼ばれる窯です。
これは山の斜面なんかにその傾斜を利用して作る窯です。
わざわざそんなところに窯を作るのにもちゃんと意味があるのです。
あまり専門的なことは覚えていませんが、高低差を利用した煙突効果で生じた空気の流れによって安定した酸素供給が高温の焼成を可能にするのだとか。
そんなわけでこれから穴掘りの時間です。
バロメッツの動かす魔法の鍛練を兼ねているので穴掘りは立体印刷で作ったシャベルとスコップを使います。
なかなかの大仕事になりそうですが動かす魔法が使えるだけましというものでしょう。