眠りの煙
サラマンダーが倒れたディノニクスのうちの一体を咥え丸飲みにした。
その時、咥えられたディノニクスが飲み込まれる直前に動き出し、少しだけ抵抗していたのを紬は視認した。
改めて倒れたディノニクスたちを観察して見ると呼吸で胸部が上下していたので、死んでしまったわけではなく眠りに落ちるか気を失ってるという状態なのだと判った。
どうやら致死毒かと紬が勘違いした灰色の煙には、触れた相手の意識を奪う効果があったらしい。
しかし致死性がなくともあの煙が危険なことには変わりない。飲み込まれる直前まであのディノニクスは意識が戻らなかったのだ。ちょっとやそっとの衝撃では起きることはなさそうである。
一体だけを丸呑みにしたサラマンダーは残りの三体を一箇所にまとめた。途中で一体が目を覚ましかけたがすぐに火花を散らしたサラマンダーからの煙を浴びせられまた眠りに堕ちてしまった。
そしてそいつらを保存食にでもするつもりなのか、穴を掘りそこに埋めてしまった。
以前、食事量が体格にあっていないなと疑問に思っていたが、こんなふうに至るところに倒した恐竜などを保存しているということだったのかと紬はひとり納得していた。
そんなことを考えているうちにサラマンダーも身を丸め眠り始めたようだ。
眠っているからといって今が攻め時かというと、そうではないと紬は考える。
あの煙の即効性を考えると下手に手を出すとすぐに眠らされてあの恐竜たちと同じ末路を辿ることとなるだろう。
だからこそ紬は考えなければならない。相手を一撃のもとに倒せる攻撃か、相手の射程を越えて届かせることのできる遠距離攻撃を。
鍵を握るのはやはりバロメッツの動かす魔法だろう。
まだ動かす魔法の射程範囲はあの煙の範囲とそう変わらないので超えることはできていない。
せめてもう少し有効距離を伸ばしたいところである。
きっともう少し鍛錬を積めば距離は伸びるはずだと紬は気合を入れて鍛錬に励むのだった……。