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 深い深い樹海の奥。その地面にあいた穴から顔を出しびくびくしながら耳を動かし、周囲を警戒する小さな影があった。


 茶色の長い二本の耳を動かしているその小動物は兎。複雑な巣穴を掘る穴兎だ。


 様々な外敵が跋扈するこの樹海に巣を作り生き延びてきただけあって、その危険察知能力はかなりのものだ。


 そんな穴兎が今顔を出したのには理由があった。


 その長い耳が怪しげな音を拾ったので様子を見に出てきたのだ。


 あたりを見渡すが音源は見当たらない。


 そもそもこのあたりであの音が聞こえるとしたら雨が降った時くらいだ。


 水の音が聞こえたのは気のせいだったのかと巣に戻ろうと思ったその時、ちゃぷんとまた水の音が聞こえた。


 その水音が聞こえたのは前後左右どちらからでもなかった。


 答えは上。はっと頭上に注意を向けるが、その行動は遅きに逸したものだった。


 頭上から降ってきたのは水の塊。


 それを視界に捉えた瞬間穴兎はその水塊に飲み込まれたのだった……。





 紬はいつか来たる戦闘に備えて新たな攻撃手段の練習のために樹海にやって来ていた。


 そこで見つけた穴兎。


 それを攻撃の練習対象とすることにしたのだった。


 やることはシンプルだ。相手を水の塊の中に取り込み溺死させる。それだけだ。


 毎日の練習を経て、バロメッツの動かす魔法の効果範囲は拡がっている。


 以前の限界は羊からの距離にして半径二メートル程であったが、今の有効距離は五メートルを越える。


 だからこそ相手の警戒が及ばない高さからの奇襲が可能となったのだ。


 制御下においた湖の水を集めて浮かせた水塊を上から落とすだけの奇襲だったが結果は成功。


 穴兎を水塊に閉じ込めることに成功した。


 ここで紬にとっての誤算があった。


 誤算と言うよりかは、ただうっかりと忘れていただけであったのだが……。


 あぁ、そういえばそうだったっけ……と言った感じだ。


 溺死させるということは、あの湖の水を飲んで取り込んでしまうということだ。


 以前の実験で小動物が湖の水を飲んだ時、彼らはどうなった?


 答えは目の前の穴兎に起こっていることと同じだ。


 苦しみ、その体からは火花が散る。


 火花と言っているが水の中でも目に見える形で発生していることを鑑みれば、その性質は火ではなく電気なのだろう。


 バチバチと発せられるスパーク。


 もがき苦しむ穴兎。


 そう時間を置くことなく、その小さな命の灯火(ともしび)は消えた。


 少々誤算はあったが攻撃手段としてはあれで問題ないだろう。


 これで切れる手札を増やすことができたと考えて良いだろう。


 あとは来る本番に向けてさらに精進するのみだと、紬は次の相手を求め樹海の奥へと歩を進めた……。


 


 

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