紬さんの生存日記9
六十二日目
今日も今日とて練習でした。
ここ数日は同じことの繰り返しが基本です。
朝一番で先ず行うのは身体を動かすことを意識しながら茎や根、葉っぱなどを動かしていきます。言ってしまえばラジオ体操のようなものですね。
ラジオ体操本来の体力向上や健康の維持、促進といった効果は見込めないでしょうが、私の目的は動かす魔法の熟練なので問題ありません。
朝になると動き出す木というのは傍から見るとかなりの不気味さがありましたが、ここには私しか居ませんから誰かに見られることもないのでこれまた問題ありません。
植物本体の次は切り離した部分の番です。羊たちや切り離した葉っぱ。それらを動かすことを意識していろいろやっています。
特に力を入れているのは葉力で、葉っぱを浮かせることができるようになってからは葉力のみで小石を積み上げで行くという練習をしています。
羊だと蹄なので物を掴むこともままならなかったですから、物を掴むことが可能になった葉力はこれからも優先的に鍛えて行こうと思っています。
あとは羊毛を数本切り離し、それを動かすなんてこともしています。羊毛も切り離したまま放置していると光へと解けるようになくなってしまうのですが、葉力と同じような感じで動かそうと念じるとその限りではないという事が判りました。
なので羊毛に触れることなく結び目を作るというなんとも地味な練習もしています。
それが役立つ時が来るのかは判りませんが、できることををなるべく増やしていくという方針なので何事も挑戦といった感じですね。
そして最後に無関係な物を魔法で動かすことを目指した練習です。
最近新たに動かせるようになったものとして、湖付近に生えている草もバロメッツの魔法の対象にすることが可能だと判りました。
湖の水と同じ様に魔素を多く含んでいるということでしょう。
しばらく時間をかけて干渉しておく必要があるものの、自身とは違う植物を葉力と同様に動かせるようなのでこちらも優先度高めで鍛えます。
湖の水のほうを操る練習も順調に習熟が進んでいると言えます。
最初はあまり多くの量を一度に操ることは難しかったのですが、今ではそれなりの量を操作して宙に浮かせる事ができるようになりました。
それなりの量とはどれくらいかといえば、羊をまるまる取り込めるほどの大きさの水球を操り、浮かせられる。そのくらいには技術をものにできていました。
ここまでくればこの水を使ってできそうな事がいろいろと思いつきます。
そんな思いついた案を実際に可能であるかをシミュレートしながら日々を過ごしていますが、そろそろその案を実行する時も近づいているような予感もしています。
種のようなものを持つ、異形の存在との生存をかけた戦闘の時が……。