動かす魔法
植物は動けない。
食虫植物などの例もあるので自由に自発的に動けないと言ったほうが正しい言い方か……。
ちなみに食虫植物などが素早く動く仕組みは、触れられた時に発生する電気信号を受けて組織内の水分が移動し、水圧の変化などで動くわけだ。
では紬がやってきたように文字が書けるほどに茎を動かすことが可能かと聞かれれば、答えは否。同じような仕組みでそのような動きができるはずもないのだ。
植物に動物のような筋肉は存在しない。
バロメッツのように茎を自由に動かすことなど本来ならば植物には不可能なことである。
ではどのようにして動かしているのか? その答えが魔法、動かす魔法だ。
バロメッツは魔法を駆使して自由に動けないはずの植物を動かしているのだと紬は考えた。
動かす魔法といっても何でもかんでも自由に動かすことができるというわけではない。
それぞれの条件を満たした物のみを、可能な範囲で動かすことができるというのが事実だろう。
例えば葉力は範囲として制限があり、根の届いてる範囲か、羊から半径二メートル程までの距離である。
羊部分を動かす場合には繋がっているならば問題なく動かせるが、切り離すならば羊が成長仕切らなければならないという条件がある。
五号のように飛ぶことも可能であるが、今のところほ翼を持つ五号のみが飛ぶことが可能だった。
そのようになにかしらの条件はある。上手く言葉にできないが、可能性の範囲内とでもいうのだろうか? 動くはずもないのだけれど動くとしたらこの範囲といった感じの範囲を出ると制限に引っかかってしまう。
羊が飛ぶはずもない。だが翼があるのならば飛ぶことができる可能性もあるだろうといった感じ。可能性の範囲内とはそんな感じだ。
そういう意味では動いてもおかしくない範囲であればかなり融通が利く。
例えば取り込んだ水分や養分などだ。体内で動かすぶんにはわりと自由に動かすことできていると思う。
かなり最初の方から意識することでそれらを好きなところに配分していたわけだが、今にして思えばそれも動かす魔法によって体内を動かしていたということなのだろうと紬は考える。
逆に体外になると制限が強まり、わかりやすく魔法の効果が及ぶ範囲が狭まる。
葉力の範囲がいい例だ。
とりあえず今までに動かすことが可能だったものは身体の一部や一度取り込んだものだ。
ではそれ以外のものは動かすことはできないのだろうか?
その検証は必要だろう。
細かい条件もまだまだあやふやだ。
とりあえず今まで以上に動かすということに意識を傾けて様々なことにチャレンジしていこう。
きっとそれが良い方向へと現状を動かすことに繋がると紬は期待し、動き始めたのだった……。