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蜘蛛




 予期せぬ巨大蜘蛛との遭遇から無事に逃げ出すことができた紬。


 しばらくあの辺りにには近づかないほうが良さそうだ。あそこが蜘蛛の新たなテリトリーとなるならばなおのことだ。


 あの蜘蛛もサーベルタイガー同様に別の場所から流れてきたのだろう。


 今思えばあの辺りの草食動物が居なくなったのもサーベルタイガーではなく、あの蜘蛛のせいだったのかもしれない。


 マキビシで機動力を奪ったとはいえ、羊三匹でどうにかなる相手よりも可能性は高そうだと紬は思った。


 その点で言うとあの巨大蜘蛛にも機動力を奪う術がある。


 一号をも巻き込もうとしたあの投網だ。


 もしもあの網にかかってしまえば樹海に住むほとんどの生物は為す術もなく捕らえられてしまうだろう。


 あれだけの巨体でありながらその行動は音も無くという言葉がぴったりなほど気配を悟らせなかったのだ。少なくとも一号の視界にはあの投網は映っていなかった。三号の視覚を共有していたからこそ躱すことができたといえる。


 今回は網しか目にすることはなかったが、あの蜘蛛がそれだけであると紬は思っていない。あの巨体であるのならば恐らくは剣鹿と同様の存在。その身で魔法を使うことができるのだろう。


 剣鹿と巨大蜘蛛、どちらの相手をするのが嫌かと言えば紬は蜘蛛のほうが嫌だと考える。


 確かに剣鹿は強いだろうが、それは正面からぶつかった場合だ。


 何らかの絡め手を用意して挑むことができれば倒すことは不可能でないと紬は考えている。


 逆に巨大蜘蛛の方はこちらが罠にかけられそうな懸念がある。蜘蛛の持つ武器は糸。


 蜘蛛といえば糸というくらいにその関係は深い。


 その糸によって張られた罠をはたして見破ることが可能なのだろうかと紬は恐れているのだ。


 まして相手は普通ではない。非常識な存在が使う糸に何が仕込まれているか全く想像もつかない。


 今回は見逃されたが次もまたその糸がこちらを狙わないとは限らないであろう。蜘蛛に対抗できるようになにか策を考えて置かなければ紬の安寧は訪れない。


 あの辺りに近寄らなければ問題ないのであればそうするのだが、恐らくそれでは駄目だろう。



 あの蜘蛛はきっと徘徊性の蜘蛛だ。


 蜘蛛といえば巣を作るイメージが強いかもしれないが、蜘蛛の種類でいえばその半数しか巣を作ることはない。


 つまりもう半数は巣を作ることなく獲物を求めて移動する狩人なのだ。


 あの時の蜘蛛は巣ではなく地に脚を着けていた。つまりはそういうことなのだろう。


 このまま紬が樹海の探索を続けるのならばいつかまた、紬の前にあの蜘蛛はきっと立ちはだかる。


 紬はその未来を確信していた……。

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