足元
待ち伏せからの奇襲を失敗して慎重になったのか、じわじわとこちらに近付こうとして来るサーベルタイガーに睨みを効かせながらゆっくりと後退する一号。
足場の悪い樹海で足元も見ずに後退するとなるとどこかに引っ掛けそうなものだが、一号の足取りに迷いはない。
それもそのはず、その場にいるのは一号だけではない。サーベルタイガーと遭遇したのは先行していた一号だけであったが、他の羊達が後方からついて来ていた。
そして羊達の視界は共有することが可能だ。
サーベルタイガーの方に意識を向けつつも一号が迷いなく脚を動かすことができるのはそういう理由だ。
更に言うと紬は並列思考を利用して行動の分担も行っている。
留守番をしている羊の思考を一号の行動に集約することによって一号の体の動きは洗練され、無駄が無くなっていた。
客観的な視点とその身体を動かす複数の思考を持つことの利点を上手く活かすことで可能となる境地。
個にして群れ、群れにして個。
それが紬が生まれ変わったバロメッツという存在の特徴であると言えるのかもしれない。
また一号の脚が足元の障害物を躱してサーベルタイガーから後退した。
ただ今躱したそれは葉力であるものを包んだものをあらかじめ進路に他の羊が設置しておいたものだ。
一号もそれを持ってはいたが今回はサーベルタイガーから注目を受けていない若葉色の四号が気づかれないように置いたのだった。
設置したそれにサーベルタイガーが近づいた時、その足元で葉力をもってして包みを開く。
中に包まれていた真っ赤なマキビシはサーベルタイガーの足元に散らばり、完全に意識の外であったそれを思いっきり踏みつける結果となった。
その足裏の柔らかな肉球部分に突き刺さるマキビシの赤色は元からの色以外の赤も混じり、それが相手に与えたダメージは計り知れない。
悲鳴を上げてのたうつサーベルタイガーを前にした紬。
その次なる行動選択は……。
残業でなかなか執筆時間が確保出来てない今日このごろです。
明日会社の忘年会があるので更新できるか微妙ですので、更新なかったら酒が入って落ちてしまったと判断してください…。