光化
それぞれの羊から採取した羊毛はどれも放置しておくと光へと変わった。
光化までに要した時間はどれもさほどかわらなかったが、一号から採取した白の羊毛のみが完全に消えて無くならず、灰のようなものが残された。
この違いについて紬が思い当たるのは羊が木に成った時期であった。
一号のみカルデラ湖に根が到達する前に成った羊だ。それ以降に成った羊達との違いといえばそれくらいだろう。
また、樹海まで運搬しようとしていたカルデラ湖付近の草も、運んでいる途中で光となって消えてしまった。
この結果を受けて検証内容を急遽変更した紬。
新たに行った検証でわかったことは、バロメッツの葉も同じように光となって消えることだ。
ただし一度葉力を纏ったものはその限りではなかった。
つまり落ち葉のように放置したままの葉は光となるが、葉力で操ったことのある葉はそうならなかった。
今まで不要となった葉は自分で食べて処理していたために気がつくことがなかったのである。
もっと時間が経つと光となる可能性もまだ残っているが、今後も観察を続けることにした。少なくとも葉力を使ったものと使わなかったものとで明確な差ができたことだけは確かである。
と、ここで新たな疑問が生まれた。
湖付近の草を運ぼうと思ったきっかけは、バロメッツの葉を食べた動物の反応を見たからであった。
その時の葉は葉力を使っていただろうか?
確か水漏れ防止のために容器の中に敷き詰めただけで葉力は使った覚えがない。
それなのに樹海まで運んだあともしばらく設置した間に光となる事はなかった。
これはどういうことだろうか?
いろいろと考えてみた紬だったがひとつ思いついたことがあったので試してみた。
それはカルデラ湖の水に浸けておくこと。
その考えは当たりだったらしく、湖の水に浸けておいた葉っぱは何もしていない葉が光になっても変わりなく、他に光となったものも試してみると、羊毛やカルデラ湖付近の草もその水に浸けておくことで光となる事はなかったのであった……。