虹色の羊
カルデラ湖付近の草を採取するためにいったん羊達が樹海から撤退したころ、紬に新たな羊が成った。
とりあえずいつも通りに通し番号で七号とする。
その体色は七色……というよりは虹色だ。
どういうことかといえば、実際の虹を想像して見ればわかると思われるがハッキリと七色に分かれているわけではない。
そしてこの七号の毛色は固定されていなかった。
わかりやすく言えばシャボン玉の表面のように様々な色が流動的に変わり、決まった色をしていないというかわった見た目をしている。
なお、比較するため同じように栄養を与えていたもう一方の蕾は予想通りにまだ開きそうにない。
やはり黄金の羊は他の条件の羊よりも必要な時間も栄養も多くなってしまうと考えていいだろう。
引き続き黄金の羊目指して蕾に養分を送りつつ、次の蕾の成長も促し始める。与える栄養の量はまた同じように一定量で送る。今回は色の指定などをせずに自然に任せることにした。
さて、新たに群れに加わった虹色の羊。
紬はその色が変わる羊毛がどのようになっているのか興味が湧いた。
紬は動かすことに慣れきった茎を操作してナイフをつかみ、その虹色の羊毛を採取してよく調べてみることにした。
ちなみにこのナイフは紬が制作したものであった。
いつものように立体印刷で作ったもの……ではなく、周囲に転がっていた黒曜石を割って作った黒曜石のナイフである。
いくつかの失敗作も生み出したがそこそこの出来のナイフを制作していた紬。
使うタイミングを逃して死蔵していたのを思い出して今回の出番となったわけだ。
そんなわけで黒曜石のナイフで採取した虹色の羊毛であるが、一本のみでもその色は絶えず変わり続けていた。
そしてそれをしばらく眺めていた時にその現象が起こった。
その羊毛が解けるように光へと変わって消え去ったのだ。
かつて見た、死体が光へと変わったのと同じ現象である。
また検証対象が増えてしまったなと思う紬。
とりあえず七号以外の羊毛も採取してみるかと行動を開始するのだった……。