枯れる水
まずはすぐに試すことができるカルデラに置いているプランターから。
せっかく育ちつつあるので試すのは一鉢。
結果、見事に枯れた。
次は岩場の影で育てているプランター。
こっちはそれなりの数があるので数鉢試す。
結果、こちらも湖の水を与えたものは枯れてしまった。
ただ枯れるタイミングは個体差があることがわかった。
最後に普通に樹海に生えている植物。
結果は…やはり枯れた。
そんな気はしていたが湖の水を与えると、たいていの植物は枯れてしまうようだった。
例外は今のところカルデラ湖付近に生えている雑草とバロメッツである紬のみであった。
この実験で得られたのは湖の水が普通の植物にはよろしく無いという事実…だけではなかった。
それは樹海に生えている植物に湖の水を与えた時のこと。
樹海まで湖の水をやりに行った四号の目を通して紬は見た。
湖の水を与えられた木がバチバチと火花を散らし始めたその瞬間をだ。
やがて火花がおさまったと思ったら、わずかに光が漏れ出たあとにその木の青々としていた葉が色褪せていき、急速に枯れ始めてしまった。
その火花は風狼や剣鹿が魔法を使った時に現れた現象と同じであるように見えた。
これはどういうことだろうかと紬は頭を悩ませる。
いままで紬がその火花を見たのは、魔法と呼ぶべきであろう超常現象が起こったときである。
では今回の火花はなんだ?
湖の水を樹海の木に与えたら火花が出たあとに木が枯れた。
文章にすればそれだけのことであるのだが、この中に答えが隠れているのだろうか?
おそらくではあるが、火花が出た要因はやはり湖の水を与えたからだろう。
では火花を出している主体はどれだ?
湖の水? 樹海の木? それとも別のモノだろうか?
要検証といったところか……。
実験の試行回数を増やしてデータを集めなければまだなんとも言えないのが現状だ。
よし、水の運搬頑張ろうと思う紬。
その後数日間、その島では樹海と山頂とを往復して湖の水を樹海の植物にかけまくる羊達の姿を見ることができたのだった……。