雨水
雨。それは植物にとっての恵みとなる。
なにがいいたいのかというとプランターから芽が出たという話だ。
カルデラにあったそのプランターは成育条件を調べるためにと、いろいろと条件を変えていたなかの中で水を与えていなかったものだ。
水を与えていなかったのだから発芽しないのは当たり前だったのだが、異世界であるわけだし何があるかわからないので念の為にといくつかのプランターは湖の水を与えていなかった。
そのプランターに雨が降ったことで雨水が染み渡り、そこに植えていた種が発芽したのである。
それだけならば何ら問題ではなかった。
しかし、それで終わらなかったのが今回の件だ。
そのまま放置していたのだが、そのプランターに生えた芽は枯れることなく成長し始めたのだ。
今までカルデラに置いているプランターで芽が出たあとも枯れることなく育った植物はなかった。
そんな中で雨水のみの水分で育つプランター……。
この現状から何がいえるのか?
今まで問題無しとしていた湖の水。
そこに問題があったということであろうか?
今まで散々湖の水美味しいと感じていた紬は困惑していた。
自分が飲んで問題がないどころか美味しいとすら感じていた水に、突然降って湧いた新たな疑惑。
今まで散々枯れてしまったのは湖の水に問題があるという説は紬に衝撃を与えることとなった。
この予想が正しいかどうかを調べるためにはどうするべきかと考える紬。
もしも湖の水が悪いのであれば植物に湖の水を与えて見れば結果がわかるだろうと考えた。
対象の植物は今回育ちつつあるプランターと樹海近くの岩場の影で育てているプランター、あとは普通に樹海に生えている植物に対して湖の水を与えて様子を見てみる。
そうすることで湖の水の是非は出ることになるだろう。
湖の水の運搬手段には葉力を用いて対処する。
立体印刷で作った入れ物でもいいと思うかもしれないが、立体印刷の弱点として気密性の低さがある。
細くした樹液を重ね上げて物を作るという手法を用いているために、どうしても僅かな隙間ができてしまうのだ。
そんなわけで運搬には葉っぱを使う。念の為に葉っぱを何枚か重ねて零れるのを予防してから包み込んで運ぶのである。
この実験の結果が出れば停滞気味であった農業についても光明が見えるかもしれないと思う紬であった……。