紬さんの生存日記8
三十三日目
今日は羽根を伸ばしていました。
のんびりとしていたわけでなく、成長し終わった五号の翼を広げて初フライトに挑戦しました。
翼を持つ黄金の羊である五号。
茎から切り離しができるまでに成長しました。
ということで早速飛ぼうと考えましたが念の為に命綱代わりに茎をつけたまま練習です。
練習を今までしなかった理由はもし勢い余って飛んで行ってしまって切り離されでもしたら目も当てられないからですね。
二号と同じ轍は踏まないのですよ。
まずは地面に足をつけた状態で羽ばたいてみます。
ぶわりと砂埃が巻き起こり目に入ってしまいました。
湖の水で洗い落とします。
気を取り直してテイクツー。
今度は加減して羽ばたきを始め、徐々に羽ばたきを強くしてみます。
ふむ、上手く行きませんね……。
次は少しばかり助走をつけてみました。
羽ばたきながら大地を蹴ります。
しかしながら飛ぶことはできませんでした。
はて? 何が悪いのでしょうか……。
この翼は飾りなのでしょうか?
やはり羊が空を飛ぶのはおかしいということなのかな?
いえ、考え方を変えなければならないのかもしれません。
ここは異世界。私の持つ常識は通じない場所です。
きっと羊だって飛べるはず、ポジティブに考えていきましょう。
まずは飛ぶはずがないものが飛んでいる状況を考えます。
箒で飛ぶ魔女は魔法のちから? 箒が魔道具というものなのかもしれません。
サンタさんのソリを轢くトナカイは翼もないのに空を駆けますね。あれは不思議パワーでしょうか?
ペガサスは翼の生えた馬ですね。この世界にもいたりするのでしょうか? 私の持つイメージだとペガサスも空を駆けるというのが似合っている気がします。あんまりバサバサと翼を動かしているイメージはありません。
こんなふうに並べてみると翼はあんまり重要でないような気がします。
翼はあくまで補助程度に考えて空を駆けるイメージを膨らませてみます。
大地を蹴るのではなく、空気を蹴って空を自由に駆けている黄金の羊を脳裏に浮かべながら再チャレンジ。
おや、今少し浮きませんでしたか?
これは手応えありではないでしょうか?
この調子で練習を重ねれば空を自由に駆け回るのも夢ではなさそうです。
さあ、練習あるのみ、トライアンドエラーですよ!