埋葬
その木は項垂れているようにみえた。
いや、実際に項垂れ落ち込んでいた。
二号が死んだ。
一号での切り離し実験が上手く行ったことに味を占めて二号も切り離してしまった。その結果が二号の死である。
二号のそれを死と呼ぶことが適切であるか紬には判断がつかないが、それまで動いていたものが動かなくなって熱を失う。それは紬にとってはわかりやすい死であった。
一号の時とは違って切り離そうとした時に僅かな抵抗を感じた時点でやめておけばよかったのかもしれない。
切り離した途端に二号のなかから紬の意識は抜け落ち植物本体に残った。
二号の身体は崩れるように力が抜け地に伏した。
一号とは違い、再び接続することはできなかった。
二号の躯は予備にと掘っていた穴へと埋葬した。
まさか二号をこの穴に入れることになるとは考えていなかった。
仔羊のまま切り離すことは未熟な果実をもぎ取るのとかわらない。
紬なりに今回の出来事を考察した結果はこのようなものである。
一号は成長しきっていた。だからとくに問題が起こらなかったのだろう。
成長しきるまえに切り離すと仔羊の未熟な身体は維持することができないようだ。
茎の先端、からになったその空席が風に揺られている様はひどく寂しそうにみえた……。
数日後、そこには二匹の羊の姿があった。
一号と三号である。
二号が居なくなった茎に改めて養分を送ることで生えてきた蕾から育った羊だ。
すでに黒っぽい毛色の三号は十分な栄養を与えて成長しきっている。
頭に生えた立派な角がその証拠だ。
三号の切り離しは問題なかった。
一号と同じように再び接続も可能であった。
試しに一号と三号の相互の茎を入れ替えてみようと試みたがそれはできなかった。
どうやら育った茎しか受け付けないらしい。
三号が成長しきった頃に新たに芽が出て枝分かれし始めたのでこちらも栄養を与えて順当にいけば四号が成ると思われる。
ともかくこれで二体同時に行動が取れる。
一号と三号がいれば片方が植物本体から離れてもなんとかなるだろう。
やっと盆地の探索に移れる。
「メェー……」
紬の異世界での探索が本格的に始まった……。