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石と種






 ボウリングのピンのようにスケルトンたちが吹き飛ぶ。羊たちの突進を受けた結果である。その衝撃で砕けたものも居れば、ただバラバラにパーツ単位で散らばったものも居る。そういった取りこぼしは鉄でコーディングした蹄で踏み潰すことを忘れない。


 装備を整えた紬は船内を徘徊するスケルトンたちに突っ込みキルスコアを増やしていく。たまに弓矢を持ち鉄の矢を放ってくるものも居るが、頭にも鎧兜のようにコーティングしているので察知の魔法を使いこなせば防ぐことは難しくない。


 そんな調子で頭蓋骨を粉砕していくと早く倒したものから順に光に解け、宝石のような透き通った赤い石が転がる。


 今のところ種のようなものはひとつもなく、すべてのスケルトンからはこの石が見つかっている。


 今まで相手にしてきた異形の存在たちからは種のようなものしか得られなかったのに、スケルトンからは違うものが得られたのはどういったことだろうかと紬は思考する。


 単純に考えればスケルトンは今までの異形とは違うということだろう。では、何がどう違うのか? 考えるべき重要項目はそのあたりになるだろう。


 ただ、考えれば考えるほどにわからなくなっていく。例えばスケルトンが違う……というよりも異形の存在のほうが普通とは違っているとも言える。スケルトンの姿形は通常の人骨からかけ離れた形をしているわけではないので異形とは言えないかもしれない。異形の存在のほうこそが普通の姿形からかけ離れているとも言えるのではないかという考え方もできるだろう。


 あるいは人の骨であるとう点が他の異形との違いという可能性もあり得る。既に一度死んだ者が生き返る……とまではいかなくても再び動き出すようになった原因がポイントなのかもしれない。


 生き物ではないものが動くという点が重要であるならば、もしかすると北の岩場で目にした岩巨人もスケルトンと同じような存在で種のようなものではなくこの宝石のような石を持っているという可能性も否定はできない。岩巨人から種のようなものが得られるかは確認したわけではないからだ。岩巨人もゴーレム的なもので何者かが動くはずのないものを動かせるようにするために仕込んだ石だと言われてもその真偽を確かめる術は今の紬には無い。


 確認できていないという意味では岩猿も仕留めそこねているので種のようなものが回収できるのかはわかっていない。もしかすると二足歩行が可能なものは種のようなものではなく石のほうが回収できるという可能性も視野に入れるべきなのだろうかなんて考えも出てくる。


 そういった点では剣鹿も確認はできていないが、風狼から得た種のようなものを取り込んでいた点を考えれば剣鹿自身も種のようなものを所持していると見ていいだろう。


 そう、種のようなものは取り込むことで新たな能力を得られる訳だが、この石はどうなのかという疑問もある。


 種のようなものならば取り込むことにそこまでの抵抗は無かった。果物を食べているときに種も飲み込んでしまうことぐらいはあることだったし、剣鹿が取り込むのを事前に目にしていたという点も大きい。


 かわって石を飲み込むとなると忌避してしまう。消化できそうにないものをわざわざ飲み込もうとは思えない。


 ただ熱を見る魔法を通して見た限りでは種のようなものの時と同じように倒した後にエネルギーのようなものが集まってこの石のようなものになっているように見えるので似たような存在であり、取り込むことで新たな能力を得られるという可能性は十分にあり得るのだ。


 もしも取り込むことで新たな能力を得られるとするとどのような能力かという点が問題だろう。少なくともスケルトンは魔法のようなものを使ってきていないし、他の異形のように火花を散らすようなこともなかった。


 強いて言うならば骨が動いているということが魔法のようである。もしそれが能力だとしたら、それを得てしまうとどのような結果が待ち構えているのだろうか……。


 ここはやはり慎重を期して安全性が確かめられるまでは取り込むことは見送ろうと紬は決めた。




 

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