表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/194

弓矢





 白く細い華奢な指。筋肉など無くどう見ても引き絞ることなど出来はしないはずの手が限界まで弦を引き絞り、限界に達した時つまんでいた矢筈からその指が離された。放たれた矢が高速で飛来し羊の肉を貫く……ことは無かった。なぜならば指が離れた直後に矢は折れて射手の足元に転がったからだ。矢の軸も木造船と同様に劣化していたために脆くなっていたらしい。


 亀裂の向こう側からの攻撃は運良く不発に終わった。


 されど危機は変わらずこの場に存在し、スケルトンたちが迫り寄って来たために紬は対処を余儀なくされる。


 前方から向かってくるスケルトンは三体。頭と腕を戻した革鎧のスケルトンとその後ろに居た二体のスケルトンが腕を振り上げ襲い掛かってくる。


 長剣を掴む分枝の魔法の木の根を操る五号だけでは三体同時に迫るスケルトンを相手取るのは難しそうだと判断した紬は一号の水を生成する魔法を使う。すると虚空に現れた水滴がどんどんと増え集まり水の壁を作りスケルトンたちの行く手を阻んだ。


 水を生成する魔法を選んだ理由はいくつかある。攻撃を食い止めるという点でならば水を生成する魔法よりもより強固な壁を作ったりできる鉱物生成の魔法のほうが向いているのだが、船内という場所の環境の上では鉱物を生成する魔法のコストが大きくなってしまう。その点、海辺という環境であるためにこの場所では水を生成する魔法の行使がやりやすくなっていた。


 そして羊たちがバロメッツの動かす魔法を使い、水の壁を押し出すように動かしたことでスケルトンたちは階段まで押し流された。巻き込まれたスケルトンたちは水圧でバラバラとなったがそれでも頭蓋の眼光は未だに消えておらず、また時間が経てば起き上がってくるだろうことが予想できた。


 この対処法では根本的解決にはなっておらず、時間稼ぎにしかなっていない。それでも稼いだ僅かな時間で現状をどうにかする手を考えなければならない。


 けれどもその思考は中断させられた。察知の魔法で何かが飛来するのに気がついた紬はとっさに長剣の腹をその方向に構えた。


 放たれた矢が長剣にぶつかりガッと音を立てる。


 今度の矢は金属製のボルトだったらしい。また、紬が回収した長剣は金属製ではなく別の硬い材質のものだったようで、金属の矢は長剣の腹に突き刺さっていた。


 弓兵スケルトンの矢筒に入っていた矢は一種類だけではなかったらしい。折れることのない金属の矢を矢筒から引き抜きつがえるスケルトンの脅威度は確実に跳ね上がっている。


 水の壁ではあの弓から放たれる一矢を防ぐことは難しそうで、長剣の耐久度も期待出来そうにない。なんとなくではあるが錆など浮いていなかったこの長剣も革鎧と同じような理由から金属製ではなく生物由来のもの、骨か何かで作られた物なのではないかと紬は察した。


 一度は防いだが次は無いかもしれない。残り何本、矢筒の中にまともな矢が残っているのだろうか?


 前後から迫るそれぞれの脅威は休む暇など与えてはくれない。


 身の安全は確保できていない。眠れない夜はまだ始まったばかり……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ