砂浜の探索
キュッ、キュッと脚を踏み出すたびに足元から音がするのは、いわゆる鳴き砂と呼ばれるものだろう。
河の流れの終わりはそのまま海へと流れていたわけであるが、流石にこの筏で海へと乗りだす気はなかった紬は筏を降りて近くを散策することにした。
人の手が入っていないためか透き通るような透明度を誇る海の中、明らかに敵対すると大変になりそうな背びれを持つ巨大な海洋生物や、海面から長い首を伸ばす首長竜が見て取れたのだから海に出ないのは正しい判断だと言えよう。
河から少し離れた場所。河口から北へ少し歩いたところに砂浜を見つけたので目当ての一つである海苔を探そうと足を踏み入れたところ、足元から音がする鳴き砂の砂浜であると気づいたところだ。
音がする鳴き砂があるのは、不純物の少ない砂であるというのを聞いたことがあり、条件として砂の出入りがない場所に鳴き砂の海岸が出来上がるらしい。つまるところここには不純物、藻なども少ないということだろうと気が付いた紬は溜息をつく。ここでは海苔を見つけることはできそうにないということだ。
しかし不純物が少ない砂ということは集めて炉に入れることでガラスが作れるのでは? と思いついたので沈みかけた気分もすぐに持ち直した。
拠点の建物にガラスの窓を入れる日も近そうである。
北がダメならば今度は南側へと探索班は移動を開始。
河口からしばらく進んだところで見つけた海岸は先程の鳴き砂の砂浜に比べれば明らかに色が違っていることに気がついた。
先程の鳴き砂の砂浜は流木すらなかった綺麗な砂浜といった様子であったが、こちらの海岸は流木や海藻などが打ち上げられていてお世辞にも綺麗ななどという修飾語はつけられない有様であった。
ともかくこちらの海岸ならば海苔も調達できそうな気がすると、早速探索を始める羊たち。
ぶっちゃけ、海苔として食べられる海藻がどのようなものなのか詳しく知らない紬であったが、板海苔にできなくても海藻サラダとして食べればいいやと、とりあえずそれっぽいものを集めてから考えようなんて、割と適当に楽観視しているようである。
そして海岸を物色する探索班はひとつの漂流物に目が釘付けとなった。
探索班が見つけたそれは明らかに人工物であったからだ。
無人島の浜辺に流れ着いた空っぽとなったガラス瓶。
紬はこの世界にも文明が発達しているという証拠を見つけたのであった……。