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 多くの水が揺蕩うその湖には吾妻紬(あづまつむぎ)が成長するのに十分な量の水と溶け込んだ栄養がたっぷりであった。


 牝鹿の命を啜ったことで一気に湖まで届いた根で吸い上げたその水はこれまで紬が吸い上げたどの水よりも美味しく感じられた。

 今まで自分が口に……いや、根にした水はなんだったのかと本気で紬が悩む程にはその差は歴然であった。


 ともかく目標に掲げていた盆地中央の湖にたどり着くことができた紬。新たな目標を定めることにした。


 今まで根の成長に多くのリソースを費やしていたため羊方面は疎かになっていた。なので暫くは羊部分の成長と新たに芽がでていたが放置していた新芽。そちらに注力しようと紬は決めた。



 数日後……になるかと紬は思っていたのだが、湖の持つ栄養は紬の想定を遥かに凌いでいたらしい。

 次の日の朝にはもう羊部分は立派な角を持つ大人の羊へと成長し、新芽の方もその枝を大きく伸ばしていた。


 大きく成長した羊の頭部に生える一対の角。渦巻状に丸く成長した角はいわゆるアモン角と呼ばれる形状をしていた。

 太陽神、あるいは悪魔の頭に乗るのと同じ形であると言えば伝わるだろうか? それとも化石のアンモナイトのような形と言ったほうがわかりやすいのかもしれない。


 体高は一メートルと二十センチといったところか……これといって運動して鍛えたわけでもないのに引き締まった身体つきなのは不思議であるが、そもそも羊が木に成る時点で今更なことであり、一晩で大人に成長する羊などはなから普通とは言えないではないかと紬は開き直った。

 とりあえずこの羊は羊の皮を被った別の何かなのだと考えることにした紬。羊のようなものはこれ以上は栄養を送ってもこれ以上は成長しないのだろうなと感覚的にわかった。


 一方、枝分かれし成長した新芽の方はというとその先端に新たに蕾をつけていた。

 こちらは栄養をもっと送ることで新たに羊を実らせる事ができるだろう。


 この調子で行けば明日には新たな目標は達成できそうだ。

 ならばまたその先を考えねばなるまい。だがすでに紬の頭には次のビジョンは固まっていた。新たな羊が成ったなら以前から試してみようと思っていたことがあったのだ。


 最初に成った羊の茎を切離す。その実験の時は近い……。


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