紬さんの生存日記20
百三十五日目
富養土の魔法やその他諸々の検証を行うかたわらで樹海から植物のサンプルや北の岩場から鉱物なんかを回収してまわるというのが最近の行動パターンとなっています。
北の岩場には未だにあの時の岩巨人が居るのですが、まるで岩山のように横になった状態で静止しているのでなるべく近寄らずに鉱物を採取しています。
いつかは相対する時が来るのかもしれませんが、関わらなくていいのならば今はそっとしておこうと思っています。岩巨人のもつ種のようなものについては少し気になるところですけれどね……。
百三十七日目
富養土の魔法についての検証結果について。
魔素を含む水を染み込ませたものに富養土の魔法をかけた場合の追加検証の結果、芽が出てからも富養土の魔法をかけ続けたものはそのまま育ったけれども、最初だけしか富養土の魔法をかけなかったものは枯れてしまいました。
この時の枯れ方を確認したところ、以前にも見たことのある現象でカルデラ湖の水を与えた植物が枯れる時と同じように内部に火花を伴う枯れ方でした。
どうしてそうなるのかと考えて、これを私は魔素の性質によるものだと推測しました。
魔素は魔法に利用すると魔素が含むエネルギーを消費するのだろうと考えていました。これからは仮にですが、このエネルギーを魔力と呼称します。
魔力を使い切って出涸らし状態となった魔素には植物を枯らしたりするような効果がなくなっています。空っぽの状態だとなんらかの働きかけができなくなっているということでしょう。
ただ時間が経過すると空っぽになっていた魔力が自然と回復していって充填されていくのではないかと思います。ある程度回復すると植物に影響を与えるような働きも復活してしまうのでしょう。
なので定期的に富養土の魔法をかけたほうは魔素が害となるだけの魔力が溜まる前に消費され、最初だけしか富養土の魔法をかけなかったものは魔素の魔力が害をなせるだけの量まで回復したために植物を枯らしてしまったのではないかと予想しています。
この仮説をもとに今後の検証を進めていくことにします。