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槍衾






 水塊を落とす手は以前にも人面樹に対して使ったことがある攻撃手段だ。湖の近くで使った時ほどではないが、長雨の影響で濃霧が発生するような環境で使ったためにまずまずの水圧を与えることができたようだ。少なくとも不可視の膜を押し流すことが出来る程には……。


 隠された姿をあばかれたカマキリの異形が取る行動が先程と同様であるならば、真っ直ぐに高速で接近してくるというのなら紬が取るべき行動は自ずと見えてくる。


 そして数秒後四号の眼前にはカマキリの異形の姿があった。


 だが四号はその場を動こうとはしない。いや、すでに必要がないのだ。


 なぜならば異形のカマキリは既に攻撃を仕掛けるどころではなくなっていた。片方の鎌を失い、身体は数カ所を抉られている。


 紬が取った行動は単純な事だった。突っ込んでくるだろうその進路上に障害物を用意した。ただそれだけである。


 もう少し詳しく説明するならば、姿を暴くために水を生成する魔法を選んだのはもうひとつの目的があった。光学迷彩の膜を押し流すのに使ったあとの水をバロメッツの動かす魔法で近くの木々の根に浸透させて操れるようにした。その根を槍衾(やりぶすま)のように配置したのだ。


 察知の魔法で跳びかかってくる絶妙なタイミングを見計らい木の根を配置したことによって、跳び込んで来たカマキリの異形は激しく衝突。何本かの根が傷を与え、そのうち一本は右手の関節部を穿ち鎌ごとあさっての方向へと吹き飛ばしていた。


 傷口から青い血を零しながらもがくカマキリの異形が残る左手の鎌を振り上げる。威嚇、攻撃、障害物の排除。そのどれかなのだろうなと思いつつも紬はもう慌てることはなかった。


 十分に時は稼げていたからだ。


 鎌を振り上げたカマキリの複眼が視界の外から跳び込んできたその影を捉えたその刹那。四号の眼前を黒が通り過ぎた。


 そこに残るは上半身が消し飛んだ異形の下半身。黒色の羊によって死を与えられた蟷螂の亡骸であった。


 樹皮大蛇との戦闘を終えた後は一号が後処理に残り、三号が戦闘中に発動した脚力強化の魔法などの効果をそのまま利用して大急ぎで合流することにした。ついでにまだ光へ解けていなかった槍を鉱物造形の魔法で変形させて兜のようにかぶっていた。


 四号が木の根の槍衾で動きを抑えたそのタイミングで三号が全力の突撃を見舞ったことがトドメの一撃となった。兜は切れ味鋭い鎌対策であったのだがどちらかというと頭突きの火力アップに繋がったらしい。


 何はともあれ四号はしっかりと攻撃に対処して時間を稼ぎ、合流した三号が決着をつけた。


 熱を見る魔法で確認を取れば、終わったことを示すように吹き飛ばした傷口付近にエネルギーが集まって行っているのを見ることができた。そこから種のようなものを抉り出し、それを四号が飲み込む。


 手に入れだ能力は光学迷彩の魔法。


 ……あれ、これだけなの? と紬が疑問に思ったその時に嫌な予感を感じて紬はバッと振り向いた。


「メエェェェェェ?!」


 薄靄立ち込める樹海のなかを紬の悲鳴が木霊した……。








 投稿開始から七ヶ月。


 最近更新がゆっくりめですがこれからもよろしくお願いします。

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