連鎖の先
忙しくて少し更新間隔が空いてしまいました……。
紬は以前、魔素を含む水や葉っぱなどを動物に与えたらどうなるかを予想しており、それを確認する実験を行おうとしていた。しかしその検証に移る前にサーベルタイガーに遭遇。戦闘となり、その後も蜘蛛の異形が現れてサーベルタイガーの死体を横取りしていくといった出来事が続いたために有耶無耶となり、結局確認をすることなく放置してしまっていた。
その放置してしまった実験を行っていたならばその結果は今回の件のように、最初に与えた動物が拒絶反応で倒れ、その死体を食べた肉食獣がまた拒絶反応で倒れるという連鎖が続くことにになっていたのかもしれない。そう紬は思案する。
そう考えると今回のように樹海のあちこちで捕食者の割合が多い複数の死体が見つかったのには理由がある筈だ。そう考えた紬はその要因について思考を巡らせる。
前に樹海に入った時にはこのような事がなかった点から、要因の一つとして長雨があったと予想し、そこからさらに拒絶反応の原因となる魔素について考えれば答は見えてきた。
長雨によって溢れ出たカルデラ湖の魔素を多く含む水。
溢れた水が紬が設置したスロープなどを伝い、麓の拠点にまで流れてきてしまったのは記憶に新しい。その対応に新たに水路と溜池を増設したわけであるが、溜池が完成するまでの間にそこそこの水量が樹海へと流れてしまっている。農地に魔素を含む水が届くことが無いようにということにしか注意していなかったのでそうなってしまったのは仕方がないことだったと言えるだろう。
ともかく、そうして樹海に魔素を含む水が流れたことが今回の件に繋がった可能性が高そうだというのが紬の見解であった。
麓にまで到達した魔素を多く含む水が樹海に流れ込み、それを飲み水として、あるいはそれを吸収することができた雑草を取り込んだものが最初の被害者となり、そこから連鎖が始まったのが今回の事態だったのだろう。
そこまで考えて紬はある事に気が付く。この連鎖が思った通りのものであったとしたらこれまで見てきた現場にあるべきものがない事に気が付いたのだ。連鎖の終わり。最後にそこで食事を行ったものが魔素の拒絶反応を起こせばその場に亡骸が転がっている筈である。
それが今までの現場に存在していなかったということから考えられる事は……と紬の思考がその回答に行き着こうというその時に事態は動く。
現場を観察していた四号はその場を飛び退く。察知の魔法により感じ取ることができた明確な殺意を感じ取り、躱したその場所に突き立つ二本の刃。
四号の目の前に現れたそれは連鎖の先。その結果だろう魔素に対する耐性があったもの。異形の存在へと姿を変えた生物が血の匂いにつられてやって来ていたのだった……。