連鎖
樹海の中で何が起こったのかを調べるべく探索を続けた紬。確認できただけでも似たような状態の現場が三箇所。血の跡だけが残るだけで死体が残されていなかったために、捕食者と非捕食者の比率など詳しくはわからないが可能性として同様のパターンであるかもしれないという場所も二箇所見つけていた。
長雨で古いものは洗い流されているだろうと考えられるので、血の跡が残っていたということは少なくとも長雨が止んでから流れた血だと見当がつく。
さらに手がかりを探す羊たち。臭覚強化の魔法を振り分けられた四号の鼻がそう遠くない場所から漂い始めた強い血の匂いを嗅ぎとった。
つまり今まさに血が流れ落ちているのだ。
その現場に向かう四号は慎重に進む。おそらくその場所には肉食の獣がいる可能性が非常に高いからだ。
匂いの元に近づいた四号は俯瞰の魔法を使い、樹海の木々の向こう側を上から確認した。
俯瞰の魔法の効果で上空から見下ろすような視界を得た四号の眼はその現場を捉えた。
なんの変哲も無い、タヌキか何かの死体を貪っている小型の肉食恐竜の姿。
これでは只の捕食シーンで、今回の件とは無関係のハズレを引いたかな……と紬が思っていたところで、とある変化が起こった。
死体を貪っていた小型の肉食恐竜がのたうち回って苦しみだし、やがて力尽きてその場に倒れ伏す。
その眼からは意思を持つ光は消えており、命の灯火が消えてしまっていることは間違いない。
なぜそうなったのか、四号の眼はその原因となったであろうものを捉えていた。
苦しみだし、のたうっていた小型の肉食恐竜の身体からはバチバチと火花が散っていた。
そのことから紬は耐性のないものが魔素を取り込んだ時の拒絶反応が起こったのだと察する。
そんな予想をしていると血の匂いにつられたのか新たな肉食獣がやって来た。
ハイエナのようなその肉食獣が食事を始め、また同じように拒絶反応とともに倒れる姿を紬は確認した。
つまり紬が見つけた不可解な現場はこうしてできていったのだと理解する。
何らかの要因で魔素を取り込んだ小動物などが拒絶反応で死に、それを見つけて食べた肉食動物がその食事によって魔素を取り込み同じように息絶え、それをまた別の肉食動物が……と連鎖していったのだろうと紬は仮説を立てた。
そう考えれば非捕食者の側の比率が少なく、捕食者側の肉食動物の比率が多かったことも納得できると考えた紬であった。