樹海の異変
樹海に立ち込めていた濃霧が薄れ、十分に視界が確保できるようになったために数日ぶりに樹海に足を踏み入れた紬。そして樹海の空気が以前と変わっていることに気が付いた。
もちろん長雨と濃霧の影響で普段よりもジメジメとしたこの環境にずっと居ては身体からキノコでも生えてくるのではないかと思うほどに、樹海の空気は湿気をはらむじっとりと重いものとなっている。だが、そういった空気の違いではなく、どこか騒がしい、トラブルの予感を感じさせるような空気が樹海を覆っている。そんなふうな不穏な空気を紬は肌で感じたのだった。
不穏な空気の原因を探るべく、紬は周囲に気を配りつつ樹海の中を進む。手がかりを見落とす事のないようにゆっくり、そして慎重に探索していた四号の鼻がとある匂いを捉えた。
臭覚強化の魔法で僅かな匂いや遠く離れた匂いであっても拾うことができるようになった鼻が捉えたのは血の匂い。
その匂いの元へと歩を進めた紬は食い散らかされた複数の動物の死体を見つけた。
樹海の中でこういった死体を見つけるのはよくあること、とまでは言わないが、全く無いことではない。
だが、今回紬が見つけた複数の死体については気になる点がある。
というのも普段であれば樹海で目にするこういった死体は小動物や草食動物などの非捕食者に分類されるであろう動物たちであるのだが、ここで食い散らかされた死体は捕食者に分類されるであろう動物のほうが多い状況となっていた。
ざっと見たところ残された骨や皮からわかった内訳、小動物1に対して捕食者5という割合でこの場に死体がかたまっているという状態は、どうしてこうなったのだろうと紬の頭を悩ませるには十分の案件であった。
小動物を襲った捕食者の群れがもっと危険な肉食獣に襲われたというのならわからなくもない。だがこの現場に限ってはそうではないと言える。なぜなら捕食者側の死体もその種類がバラバラであるからだ。
この日、樹海の探索を続けた紬は同じような現場をいくつも見つけることとなり、たった数日立ち入らなかった間に樹海の中で何が起きているのだろうと困惑することとなったのだった……。
早いもので投稿開始から気づけば五ヶ月となりました。
五ヶ月も書いて主人公以外の主要キャラがまだ全然出ていないというスローペースですが、これからもこの作品を楽しんでもらえるよう頑張っていこうと思いますのでよろしくお願いします。
近況報告:最近仕事が忙しすぎて執筆時間の確保がなかなかできません。
なるべく更新が途切れないようにしようとは思っているのですがなかなか難しいです。なんで一日が二十四時間しかないんですかね? もう三時間、二十七時間くらい欲しいです……。